生まれて初めて、一晩で三本の舞台を観てしまいました。

いや、今日はもともとこの作品観るつもりでいたんですけど…それにしても様々な事情で、途中でやめられずにシリーズ全作観てしまいましたよ…。

そう。

その作品の名は。

 

 

 

泪橋ディンドンバンド

 

 

※いつも通りネタバレしまくりますので、ご注意ください。

 そしてこれもいつも通り?いや、今回はいつもよりかなり辛口です。

 このシリーズぞっこん大好き!な方は読まないでくださいねキョロキョロ

 いや、マジで!

 

 

この作品については、生では全く観ておらず、DVDで初めて拝見しました。

お話の内容も全く知らなかったので、作品解説が出来ません、ごめんなさいショボーン

もう少し作品のことを知りたくて、先ほど全作のパンフレットを通販で購入したので、また別に機会にお話しできれば。

 

さて、この作品、シリーズ物です。はなからシリーズ物として何話か出す計画が有ったのかなと、個人的には邪推しているところ…ですが。

作・演出は、私が最近ごり押しにごり押してる「ハリトビ」の堤泰之さん。

言わずと知れた名脚本家。初演は2016年かな?もう4年前なんですね。

 

作品の舞台は、東京の小さな過疎の町。

泪橋という橋の「こっち側」にある、貧しい地域の話です。

両親を早くに亡くし、その遺産である潰れ掛けの雀荘を細々と維持している銀次郎とその姉である牡丹、そしてその雀荘を事務所にしているちんどん屋「泪橋ディンドンバンド」のメンバーが、この物語の登場人物たちです。

 

そう。

ディンドンバンドって、バンドって題名なのに、やったら広告のフォントが習字風のごっつい字体だなと思ったら、ちんどん屋さんだった!びっくりした!笑

 

ともかく、この作品、大ざっぱにまとめると、その泪橋ディンドンバンドを中心とした、ものすっごくベタな人情噺です。

え、今どきこんなのやる!?って思うくらい、めちゃくちゃベタ。ベタを極めてる。

平成を通り越してもう昭和。それも戦後くらいのイメージ。

それくらい、めちゃくちゃベタな、ベタを極めた、まるで歌謡曲の世界のような作品でした。

 

ちょっと穿った見方をすると、この作品、某芸能事務所のプロデュースで(これ、某にする意味有るのか???笑)ちょっと俳優のキャラありきで脚本をオファーしたんじゃないのかな、なんて思ってしまったんですが…実際のところはどうなのでしょうか。

 

というのも、第1作目が正直あんまり面白くなかったんですよ。(ごめんなさいね)

まず、設定が全然わからない。

泪橋って言うのがどこにあるどんな橋なのかも分からないし、出てくる度に役者は正面切ってなにか喚くばっかりだし(録音の状態によるものか役者の技術によるものか、いまいちセリフが聞き取れない)、いわゆる闖入者…これは物語を動かす役割を担う、外部からやってくる登場人物のことですが、その人物の立ち位置がよくわからない。

よくわからないまま話が進んでいってしまう。もちろん、おいおい紹介があるわけですが、キャラクターの内面についても、ちょっと見え辛い部分が多いんです。

例えば、主人公である銀次郎が、新参者に「ダサい」って連呼されるシーンがあるんですが、銀次郎が全然怒らない。観客のほうがイライラしちゃうくらい、全然怒らない。で、観客はなんで怒らないのか分からん。

「銀次郎…良いヤツなのか気が弱いのか…はたまためちゃくちゃ懐が広いのか…」

なんて思っていると、新参者がちょっとその辺にあるものを触ろうとしたらキレる。

もちろん、理由があってのことなのですが、私にはそれがすごく唐突に感じてしまって…銀次郎がどんなヤツなのかちょっとよくわからないまま話が進んでしまいました。

他の登場人物についてもそういうところがかなり有って、特に致命的なのは、闖入者である秋川諒が改心して泪橋ディンドンバンドに入りたい!銀次郎に謝りたい!って思うまで軌跡が、全く謎なんですよね。なんか突然改心して、突然土下座して、突然「いいぜ仲間になれよ」みたいな感じなんですよ。いや、個人の感想ですけど。

で、私はちょっと思った。

ちょっとこれはしっぱいしたかも、と。

 

 

しかし、正直この人の脚本にしてはあんまりお粗末だなと思い(大変失礼。)、こんなはずはなかろう、おそらくはじめから連作になることが決まっていたから、一作目は色々と端折ってしまったのであろう…と思い…そのまま2を観ることに。

するとずばり。

ここから快進撃でした。

 

 

 

泪橋ディンドンバンド2ー傷だらけの夕陽ー

 

このお話は、前作から遡って5年目。

前作の当時には中心的な人物になっている、安里勇哉さん演じる卓が、ディンドンバンドに加入したばかりの頃のお話です。

2作目になるとだいぶ分かってくるのが、この作品が舞台としている街の状況。

1の時すでに、この街がいわば「斜陽の街」で、貧しくて、住んでいるのは年寄りか風来坊ばっかりで、どんどん店が潰れていって…その潰れていく店の看板を、銀次郎が事務所にしている雀荘に保管しているという話は出ていたわけですが。

ここには、隣町との間に泪橋という橋がかかっていて、その川のこっちと向こうではもう全然世界が違っている。

こっちは敗者、向こうは勝者。成功すれば、橋を渡って向こうに行ける。

「川の向こうに行きたい」

というセリフが、このシリーズを通してのある意味キーワードだということが分かって来ます。

詳しい内容は、是非観ていただくとして、この作品では卓の賢さが際立っていました。そして、その純粋さが。

牡丹さんの巻き込まれるとある事件を中心に話は展開していきますが、卓を中心に据えて、彼がいかに真面目で頭が良いか(実際彼は、この街の中で見ればとんでもないエリートのようです)をじっくり描いたことで、この後に続く「泪橋ディンドンバンド3」への布石を打っています。

 

前作までと圧倒的に違うのは、登場人物たちの心理描写が非常に詳しくなったことです。どうしてその人物がそんな行動を取ったのか、今度はちゃんと分かる。

でもそれは、シリーズものだからこその強みなのかもしれません。

正直1作目からこれくらい分かりやすかったらいいのに…と思ってしまう。

2はとっても良かったですよ。話も分かりやすいし、何を主題に置いたのかも明確でした。副題は銀次郎のセリフからですが、そのセリフも違和感がなかった。

この街の状況と、それを照らし出す斜陽の光とのイメージは非常に親和性が高く、イメージしやすかった。

ギャグシーンの入れ方やBGMを流すタイミングも、まさにベタを極めたという感じでとても良かったです。

 

そして、長くなってきたけど、そうして明日も朝早いんだからそろそろ寝ないといけないんだけど、忘れそうだからそのままいっちゃう。

まさか今夜中に観ることになるとは思っていなかった続編にして最新作。

 

 

 

 

泪橋ディンドンバンド3ー泥まみれの月ー

 

 

これは、まぁ推しの主演舞台ですので(とはいえ、このときはとてもとても観に行かれる状況に無く生では観られませんでしたが)評価は緩めですが。

悪くなかったと思います。ええ、面白かったと思う。

ただ、私は連続して3作とも観てしまったので、面接シーンのネタはちょっと飽きた。笑

あ、でも和田さんの特技披露シーンは面白かったです、ごちそうさまでした酔っ払い

 

で、ここに来てようやく、メンバー間での大げんかが起こる。これはなかなか重要なことで、おおよそ小説でもまんがでも芝居でも「バンド」と来れば喧嘩が定石でしょう。

だいたい、音楽性の違いだとか、方向性の不一致とかで大げんかが起こる。

それが、まぁこの泪橋ディンドンバンドは、実際にはバンドじゃないとはいえ、これまで喧嘩らしい喧嘩を一度もしてこなかったんですね。

それがなぜ大きなトラブルに発展したかといえば、中心人物であった銀次郎が怪我で不在になるからです。

で、このリーダーの不在をどう処理していくか、という重要な回の主役を任されたのが、我が推し和田雅成さんが演じる哲也です。

 

彼は関西出身のちゃっきちゃきの関西弁ボーイ。今までなぜこんながちな関西弁キープしているヤツが東京の、しかもこんなしんどい街に来ているのかイマイチ分からなかったのですが…まぁ、結局分からない。笑

分からないんだけど、実家はお好み焼き屋さんで、7年前にはお父さんが病気して店を手伝うために一度実家に帰り(これは2で話題になってた)、更にその後父ちゃんにもなにかあって(このへんうろ覚え)、この7年間で2回の長期休業をしたことが分かりました。

そう、どうもこの子、単身東京に出てきたらしい。

…そんな話、今までしてたっけ?

私はずっと、なんでこの人の両親東京に出てきてまでお好み焼き屋してるんだろう?って思ってました。笑

 

まぁ、とにかく。

そんな頑張りやさんのしゃかりき関西弁ボーイが、リーダー不在の穴を埋めようと一生懸命頑張るんだけど、上手くいかない。

それどころか空回りして、仲間の不和を招いてしまう。

これ、ちょっと見ていて胸が痛むのは、真面目な人が、真面目だからこそ起こす問題って、たいていこういう感じじゃありません?

そしてバクステ映像とか観てると、和田雅成さんって、こういう健気で真面目な感じ…ありません…?

なんだかいかにも「当て書きです!」って感じがして…ファン的にはちょっと胸が痛んだんですが…それは勝手な話。本当に勝手な話。(失言か…?)

このお話の中では、聡明な卓までが同級生にいいようにされて。泪橋ディンドンバンドがかつてない窮地に陥るわけなのですが…

まぁしかし、そこはベタを極めたこのシリーズ。

勧善懲悪というわけではありませんが、最後には大団円の、べったべたなハッピーエンドで幕を閉じます。

ってか、多分誰もわからないと思うんですけど…なんとなくこの話、宮本輝「道頓堀川」の雰囲気あるんですよ…(分かってくれる方いたら一緒に呑みたい生ビール

 

 

 

総じて言うと、この作品、多分シリーズが進むごとに分かりやすくなっています。

それは受け取り手の問題でもあるし…でもやっぱり作り手にかなり大きく依存しているような気がします。

時間をあけずに三作連続して観てみると、明らかに一作目は手探り感がある。

この人がどんな俳優で、どんなキャラクターを演じやすいのか、どんなことをできるのかを、脚本・演出の側が掴みきれていない感じが、どうもしてしまいます。

それに比べて、2作目以降は、しっかりとストーリーに重きを置いている感じがするし、演出にも糸を感じられるようになってくる。

1作目からずっと使われている「レトロな」手法は、最初と最後に役者たちが正面切って決めゼリフをいうことなんですが、これも3作目になってくると、最早この作品の看板になる。

結局全貌が分からないこの街のことも、なんとなく想像できるようになってくる。

とんでもないあだ名の住人達も、じんわりとその姿が見えてくる。

 

この作品は、そうやってシリーズ通して見守ることを前提にしている作品なのかもしれません。

 

というわけで、かなり辛口のことを書いてしまいましたが、2作目3作目はまたじっくり観たいなと思う舞台でした。

他にも色々、書きたいことは山ほどあるんですが、このまま書き続きるとマジで明日仕事中に失速してしまうので、今日はここで止めにして、さっき通販で頼んだパンフレットが到着したら、それを読み込んだ上で再びここで語りたいと思います。

 

ああ、なぜ私はいつもこんなにとんでもなく長く書いてしまうのか…まとめてから文章にすればいいじゃないかといつも思うのですが、なぜだろうそうならないのは…!!

それはね!!

私に根気がないから!!

まとめたらもうそれで良くなってしまう、そんないい加減な性格だからです!!

大変、ごめんなさいねてへぺろ

 

 

ラブレターは一晩寝かせろって言うけれど。

芝居の感想は寝かせず上げちゃう…これも、ごめんなさいねてへぺろ

 

 

そんなわけで、明日はがんばって仕事に行って、そして帰ってきたら…そうだな、このシリーズと一緒に買った「画狂人北斎」のDVDを観ようかな!