つかこうへい作品に若き天才演出家である中屋敷法仁が大胆に「改竄」を施したという(自分の中ではものすごく)話題の「改竄・熱海殺人事件」を観てきました!
マチネは「ザ・ロンゲストスプリング」ソワレは「モンテカルロ・イリュージョン」の二本立て。
紀伊国屋ホールで計4時間ほど缶詰になるので、このご時世迷ってはいたんですけども、こんな機会はもう無いかもしれないと思い切りまして、行ってきましたよ!!
なぜ私がこんなにも熱く「熱海殺人事件」に想いを寄せているかというのは昨日のブログをご参照頂くことにして。

あのね…凄かったよ…。
分かってはいたけど、本当に凄かったんですよ…。
とりあえず、思いが滾りまくっててしょうがないので、順番に思いの丈をぶつけていきます。
あ、念のため、これから観に行くからネタバレは困る!という方は、オッケーになってから読んでいただけるとありがたいです。
ネタバレと言っても、名作ですから今更ですけど、今回はなにしろ「改竄」ですからね!



「改竄・熱海殺人事件 ザ・ロンゲストスプリング」
いわば最もオーソドックスな「熱海殺人事件」です。大音量の「白鳥の湖」とともに始まり、圧倒的な量の台詞と眩し過ぎるほどの強烈なライトと爆音の音響とでストーリーが進んでいく。
幕開きの瞬間の絵面。木村伝兵衛が黒電話で何かを捲し立てながらこちらを不敵に睨めつける。声は聞こえない。何言ってるのか分からない。だけどそれだけで木村伝兵衛がどんな人物が分かってしまう。
「うわああああああああ!!!!!これだぁぁぁああ!!!!これが熱海殺人事件だ!!!!!!!」
と感じざるを得ない圧倒的な説得力。
もう、言ってみれば写真。音が出て動いて目の前で生きているポスター。
五感全てで、とんでもない物語が幕を開けたことを感じる。そう、これはそんな舞台なのだ!!!

はい、ちょっと飛ばしすぎましたね。

とにかく全体的に非常に私の中の「つかこうへいの『熱海殺人事件』感」に合致する演出で、一瞬も飽きることなく、ほとんど息もつかせない感じで進んで行きました。
耳が痛くなる一歩手前の絶妙な音量で頻繁に差し込まれる音楽が、この作品を古くも新しくも感じさせる。
その上多用されるLEDライトが、いやらしいくらい明るいでしょ、あれ。なのに、なんだか妙に幻想的なムードを作ってたんですよね。
それで、客席まで明るくなっちゃうほどの光で、観客達までを一人残らず見世物の場に引っ張り出した。舞台の中の世界と現実を溶け合わせて、均質なものにしてしまうかのようだった。すごい。
まぁ、ちょっと明るすぎかなという感じもしましたが。途中何度か客電がついたのかと思っちゃったし。笑

役者陣も力闘してました。
まずは主演、木村伝兵衛役の荒井敦史さん。びっくりしたよ。めちゃくちゃ若いのな…93年生まれってまだ26だろ…伝兵衛って今年40になる役だよ…?
まぁこの役者さんはとにかくスタイルがすごい。背が高く、めちゃくちゃ足が長くて、伝兵衛のタキシードのさ、アレが全然腹巻きになってないの…。
今回の作品、いわば歌舞伎で言うところの「見得を切る」ようなところが所々あって、特に最初と最後は伝兵衛のビジュアルによるアピールがすごいんですよ。彼の抜群のスタイルがそれを可能にしたと言って過言では無いんじゃなかろうかと。
そう思うわけで。
もちろんお芝居も凄かった。声もしっかり出ているし、表情もいい。しかも初主演なんですってよ!?マジかよ…。
前半は「伝兵衛にしちゃ若いな…?」と思わなくもなかったけど、後半にかけてどんどん良くなっていく。というか、多分私の抱いていた伝兵衛のイメージが塗り替えられたのでしょう。すごい。
次に水野朋子役の馬場ふみかさん。
私は個人的に女優さんには本当にほとんど興味ないんですが(クズ)馬場さんの水野よかったです。いや、本当に。
特に終盤、容疑者大山金太郎と犠牲者アイ子の再現シーンでアイ子を演じている時がものすごくよかった。華奢な全身で、虐げられて馬鹿にされて、どうにもならない女の哀しみを表現してて、吾輩は涙が止まらなかったぞよ…。
それにしても毎度思うんだが、アイ子って、風俗やってもお客がつかないほどブスって設定のはずなのに、水野刑事に再現させるの無理があると思うんだよな。だって美人だしスタイルがいい人がやるじゃん。どうも何度見ても腑に落ちないんだよな…。
さて、熊田留吉役の佐伯大地さん。私この方は全然知らなかったんですけど、めちゃくちゃかっこいいですね!?背は高いしガタイはいいし、なのにめちゃくちゃ優しそうなハンサムじゃないの…今時あまりいないナイスガイ系よな…。
舞台でもばんばん汗やら唾やら飛ばして喋っているのが見えて、おおおお、これが「熱海殺人事件」だよ!と思わずにはいられなかった次第。
熊田の役所って、多分作品の中でもかなり難しいと思うんですが、男の呪縛に雁字搦めになっている窮屈さをよく表現してらして、さらに常識人としての困惑がよく伝わってきて(笑)とてもハマってました。
そして何より素晴らしかったのは大山金太郎役の玉城裕規さん。私いろんな作品で玉城さん観てるけど、こんなにいい役者だったのか…と開眼したような気持ちでした。
出場してしばらくはコメディシーンを一人で引っ張っていた。あれは大変だ。君の肩に全部かかってるぞ金太郎!ってなった。笑
そしてクライマックス。再現シーンで見せる、田舎の心優しい青年の慟哭。激昂。一歩踏み出してしまった、その瞬間の表情。そして彼は人を殺す。
あのシーンの深い深い哀しさ。思わず「あっ…!」と声が出てしまいそうなヒリヒリする緊迫感。
あんなにいい芝居をする人だったのか…ムーさんの印象が強すぎて…知らなかった。笑

あ、気づいたらとんでもなく長くなってしまいました。これからソワレ見て、その感想も一緒に書くつもりだったのに…!
これ以上長くなると我ながらうざい気がするので、とりあえず一旦ここで締めます。笑

さ、「改竄・熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン」の開幕まであと1時間ちょい。
次はどんな作品なのか…楽しみに行ってきます!また改めて感想書きますね!!


こんなに長い駄文にお付き合いいただけた皆様方(いらっしゃるのだろうか…)、本当にありがとうございました。
最後に、この舞台当日券もあるそうです。こんなご時世ですから消毒等に気をつけつつ、もしご興味あれば是非観に行ってみてください^ ^

では、また!