世界が大変な騒ぎになっていて、もう明日がどうなるか分からない今日この頃です。
それで、そんな中、大変悩みに悩んだのですけれど…。
でも、明日は、紀伊国屋ホールで公演中の中屋敷法仁演出「改竄・熱海殺人事件」の両バージョンを、予定通り観に行くことにしました。

「熱海殺人事件」は、有名過ぎるほど有名な、つかこうへいの代表的な戯曲です。そしてつかこうへいの戯曲というのは、恐らくびっくりするほど好き嫌いが分かれます。
ちなみに、私は好きか嫌いかでいうと嫌いです。ごめんなさいだけど、ほんと、間違いなく嫌い。だって何言ってるか分からないし、何が言いたいのか分からないし、テーマもよく分からないんだもん。
でも、観たいの。
そんな不思議なことある?って自分でも思うんですけどね…。


私が初めてつかこうへい作品に出会ったのは中学生の時。本屋さんで「幕末純情伝」という小説の文庫本を見つけたんですね。

それが悲劇的なことに、私は当時、父親に貸してもらった「燃えよ剣」を読んで、新選組の面々の歩んだ運命の儚さと美しさに心を打たれ、すっかり新選組を描いた小説にハマっていたところだったわけです。


「幕末純情伝」というお話を知らない人にはこっからの話はちんぷんかんぷんだと思うので、ちょっとばかり補足させていただきたいんですがね、ネタバレにならない程度で。

沖田総司がね、女なんですよ。

以上。


まぁね、第一印象最悪でしたよ。

なんで!?ってなったし。個人的には沖田総司が女設定で良かったところが一つも見つからなかったし。

しかも中学生だから、単純に純粋に「キモ」ってなったのね。

でも、一応その後にね「飛竜伝」も読んだんですよ。まぁ、今思えばやめとけよって感じなんですけどね。

はい。

印象最悪でした。

「飛竜伝」に至っては、もはや坂本龍馬の口が歯垢だらけでめちゃくちゃ臭いって設定しか覚えていない。どんな話だったのか…分からん。


まぁ、そんなこんなで返す返すも印象最悪だったつかこうへいだったわけですが、転機は高校1年生の時。

演劇部の先生が、多分優待チケット的なものをゲットして来てくれたのかな、先輩達と一緒に観に行ったんです。

「熱海殺人事件」

あれ、バージョンなんだったかな…サイコパスだったと思うんだけども。

あれが、本当に衝撃だったんですよ。

渋谷のパルコ劇場で、結構いい席で。

目に染みるくらい赤い舞台、耳をつんざくような音響、すごい剣幕で捲し立てられる台詞は何を言ってるか全然分からなくて、差し込まれる唐突な行動に一瞬前と今の連続性を見失う。

理解不能、合理性皆無。

観ていた私はもうパニック。




そう、

パニック!!!!!




なのに。

圧倒されて、気持ちよかったんですよ、それが。

理解できなくても構わないと思ったんですよその時。

ただのエネルギーの塊がそこにあって、どんどん膨らんで今にも破裂しそうなそれに呑み込まれて、溶けて一緒になって、どこまでも行けるような気持ちになって、笑いたいようにも泣きたいようにも感じて、神様にも会えるような感じがして。

それで幕が閉じた後に、腰が抜けて動けなくなってる自分に初めて気づく。ような。


分かります?

分からないでしょう?

自分でも何言ってるのか分からん。笑


のですけども、本当にそういう感じだったんですよ。それくらい、凄かったんですよ。

高校生だった私は、その時理解したんです。

つかこうへいは小説じゃねぇ。戯曲だ。それも読んじゃダメなんだ、観ないと。生で、舞台を観ないと。そうじゃなきゃダメなんだって。


そんなわけで。

あの、先輩達に文字通り手を引かれて(だって渋谷なんて行ったことなかったんだよ!!)連れて行ってもらったパルコ劇場での体験から早十数年。

明日、私は悩みに悩んだ挙句、つかこうへいを観に行きます。

マチネで「ザ・ロンゲストスプリング」、ソワレで「モンテカルロ・イリュージョン」の二本立て。

もちろん、マスク装着の上、消毒薬も持参します。間の時間も、出来るだけ屋外の風通しの良いところで過ごすつもりです。


楽しみです。

楽しみというか、もうほとんど、戦場に向かう心意気です。


皆様、どうぞお体にお気をつけて。

手洗いと検温をして、よい年度末を。



明日、情熱が抑えきれなくなったらまた書きますね。笑