呪いのブレスレット56 | HAPPY DAY

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☆ベリーズ文庫(現代・ラブファンタジー・異世界レーベル)マカロン文庫・コミックベリーズ・マーマレード文庫・マーマレードコミックス・LUNA文庫・夢中文庫・ネット文庫星の砂にて執筆させていただいています。

夏合宿のはじまり

集合は学校。

貸し切りバスで千葉県の海の見える合宿所へ行く。

毎年行くところで、高校2年のあたしは2年目。

体育館やサッカーが出来るグランド、テニスコートも6面と広大な敷地を持つ合宿所だ。

でも、宿泊施設の方はかなり古く、床はきしみ、昼間でも薄暗い雰囲気。

今回はサッカー部が一緒だから、賑やかになるはず。薄暗い雰囲気の合宿所も少しは明るくなるのではないだろうか。

学校へ着くと、貸し切りバスが2台待っていた。

「おはようございます!」

「あ! 亜美、おはよう!」

3年の部長が指示を出すために、バスの入口に立っている。

「手荷物以外は下に入れてね」

「はい!」

部長は出席名簿を見てあたしのところに丸を付ける。

 

ラケットバッグと旅行カバンを入れたところで、もう一台のバスの側に玲奈を見つけ向かおうとした。

あ……。

そばに小杉の彼女である3年のマネージャーがいるのが見えて足が止まる。

彼女は部員から何か話しかけられても首を振ったり、一言二言話すだけで、元気があるようには見えない。

そこへ小杉が彼女たちの元へ荷物を肩にかついでやってきた。

マネージャーと同じく、小杉の雰囲気も暗い。

絶対に2人はなにか知っている……。

「よっ! 亜美!」

後ろから肩を軽く叩かれ、振り返ると翔平が元気な笑顔で立っていた。

翔平の顔を見るとホッとする。

翔平はあたしが見ていた方を見てから、首を傾げるようにして見るけれど何も言わない。

「バスに乗ろう」

翔平はあたしの手を握り、バスに乗り込んだ。
 

手を握りながらバスの中へ入ったものだから、男子部員たちの冷やかしをもろ受ける。

翔平は「羨ましかったら彼女作れよ」なんて、しれっと言っている。

座席はあらかじめ決められており、あたしを座らせた翔平は後ろへ行ってしまった。

窓際の席に座っていたみのりが三日月のような目をしてあたしを見る。

「翔平って、堂々として優しいよねー」

「みのりまで冷やかすの?」

「冷やかしてなんていないよー。本当の事じゃん。うらやましいって。あたしも木下君とそうなればいいな~」

花火大会で距離を縮められたようで、この合宿でもっと接近したいらしい。

合宿所に着くまでの約2時間半、みのりの恋バナに付き合い、あっという間に目的地まで到着した。

お昼ご飯は30分後、割り当てられた部屋に入り、着替えや荷物を整理する。

ドアの横に貼り出された名前。

あたしたちは4人部屋だ。


部屋に入りお風呂に必要な服や下着を出そうと、窓際に置いていたバッグを自分の手元に引き寄せる。

バッグのファスナーを開けた瞬間、金縛りにあったように背筋が凍りついた。

なんで……?

どうしてひかりのブレスがここにあるのっ!?

バスタオルの上に血のような赤いブレスレットをただただ唖然と見つめる。

昨日、タンスの中にしまったのに……。

ひかりの力を増長させるブレスレットがここにある。

「亜美? 何してるの? 行くよ!」

「あ、うん」

みのりに急かされ、適当に服をみつくろいトートバッグに入れた。

ブレスレットをバッグの下に押し込むと、みんなの後について部屋を出た。

なにかが起こりそうで怖かった。
 

 

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