呪いのブレスレット52 | HAPPY DAY

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☆ベリーズ文庫(現代・ラブファンタジー・異世界レーベル)マカロン文庫・コミックベリーズ・マーマレード文庫・マーマレードコミックス・LUNA文庫・夢中文庫・ネット文庫星の砂にて執筆させていただいています。

メモとスマホ

「ただいまー」

部活が終わり家に着いて洗面所で手を洗っていると、突然声をかけられてびっくり肩が跳ねる。

「あらやだ。なにをそんなにびっくりしているの?」

ママだった。

神経質になっているみたいだ。

いつもひかりが側にいるような感じがして、落ち着かない。

「と、突然だったからびっくりしたのっ」

濡れた手をタオルで拭きながら言い訳。

「あさってから合宿でしょ? 用意はしてあるの?」

「あ、ちょっと足りないものがある」

まだバッグの中に入れていないけれど、足りないものはいつも同じ。

洗面用具や日焼け止めなんかだ。

「明日買っておくから、メモしておいて」

「はーい」

「早く夕食食べちゃいなさいよ。お味噌汁、温めてね」

「温めてねって、どこか行くの?」

よく見ると、いつもよりおしゃれな服をママは着ている。

 

「パートさんたちと居酒屋で暑気払いがあるのよ。言ってあったでしょう? 麻美とパパはもう食べたから。じゃあね。行ってきます」

ママはパンプスに足を入れながら早口で言うと出て行った。

玄関の鍵をかけてリビングに行くと、パパはソファに寝そべり、うつらうつらしている。

麻美はいなかった。

チャンネルをバラエティ番組に変えたとたんにパパが目を開ける。

「ん? 帰ったのか」

「うん。ただいま」

「ママは――」

パパが身体を起こし、大きなあくびをする。

「今出て行ったよ」

「そうか。私も部屋へ行くよ」

パパがリビングを出て行った。

なんとなく距離感がある会話。

年頃の娘を持つ父親としては少し照れがあるのかもしれない。

夕食の後、お風呂に入り、そろそろ寝ようかと思った時、玲奈のお兄さんを思い出した。
 

「そうだ! 電話番号!」

ハンガーに掛けてある制服のスカートのポケットを探る。

あれ? ない?

両方のポケットを何度探しても玲奈からもらったメモがない。

「おかしいな。どこかで落とした?」

だとしたら玲奈のお兄さんの申し訳ない。

迷惑をかけてしまったかもしれない。

拾った番号に面白半分で電話をかけられてしまったかもしれないから。

そう思うと、重い気持ちになりぐったりとベッドの上に腰を下ろす。

どこで落としたのだろう……。

自転車を漕いでいる時?

部室で着替えている時?

玲奈に電話をしようか。

スマホを開いて、もう遅い時間だったことに気づく。

12時過ぎか。

いくらなんでもこんな時間にかけられない。

あたしは明日電話をかけようとあきらめ、ベッドに横になった。

 

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