夜が怖い
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今の体調で合宿に参加するのは辛いと思って、学校の帰りに病院へ行くことにした。
結果、あたしはこの上なく健康体で、身体が重く、怠いのはまったくわからないと言う。
だったら、なんでこんなに身体が重いんだろう……。
やはり夢が何らかの影響を及ぼしているのだろうか。
こんなこと話しても誰も信じてもらえないんだろうな……どうすればいいの?
ふたりも死んだ。
そして、そこにひかりがいた。
ひかり、あたしにどうしろと言うの?
ひかりのお墓参りに行こうか。きっと寂しがっているはず。
ひかりの家はこの近辺の地主。
近くのお寺が経営している幼稚園を出ているし、そのお寺の檀家だと知っている。
一度、家に帰ると荷物を置いて花屋に立ち寄ってからお寺に向かった。
お寺でお線香を買い、吉村家のお墓の場所を教えてもらう。
教えられたとおりに行くと、お墓にたどり着いた。
数日前に手入れされたのか、他の墓石の周りは草が生えているけれど、吉村家の墓石の付近は生えておらずきれいになっていた。
お花も新しい。
墓標に刻まれた新しい文字。
ひかりの文字を指でなぞる。
「ひかり、いったいどうしちゃったの? どうしてあたしにあんな夢を見させるの?」
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その夜、寝るのが怖かった。
あたしは枕とタオルケットを持って隣の麻美の部屋に行った。
「なあに? 亜美ちゃん」
「麻美、一緒に寝よう!」
「そんなこと言うの久しぶりじゃん。どうしたの?」
「ちょっと怖い夢見たから……」
「そうなんだ。じゃ、一緒に寝よう」
年子のあたしたちはよく一緒に寝ていた。
ベッドに寝そべっていた麻美は少し横にずれ、その横に枕を置いて横になった。
麻美が隣にいる安心感であたしはすぐに眠りに落ちた。
翌日、目を覚ましたあたしは夢も見ずに眠れたことにホッとした。
あたし、なにも見ていないよね?
夢を見ずにぐっすり眠ったはずなのに、昨日と同じく身体は鉛を乗せたみたいに重い。
まだぐっすり眠る麻美を残して、枕とタオルケットを持つと自分の部屋に行く。
入った瞬間、ゾクリと寒気を感じた。
クーラーを点けっぱなしにしていたわけではなく、夏場のこの部屋はムワッと暑いはず。
目の端にピンク色の物が見えて顔を向けると、持っていた枕とタオルケットを落とし、手を口元にやった。
「ひっ!!!」
机の上にピンクの見覚えのある便箋が1枚。
近づくと、小杉君へ「好き好き好き好き好き好き好き好き好き……」と便箋一面に書かれている。
みたことがある文面だけど、便箋は折られておらず、前のとは違うものだとわかる。
あたしはベッドの下からピンクの箱を出すと、ベッドの上に置いて蓋を開ける。
中には血の付いたTシャツ、毒々しい赤いブレスレット、ピンクの封筒の端が見えて、それを取り出し開ける。
それは以前の物だった。
