あの女の子たちに話しかけてからあきらの様子がおかしいんだからっ。
「なんでもねえよ」
あの顔、どっかで見た事がある・・・・・・。
なんでもないと答えながらも、さっき自分を見ていた子が気になる。
「早くクラブにいこーよ タケシたち待ってるよ~?」
歩いている方向は行きつけのクラブに向かっていて、後5分ほどで着くだろう。
あきらは恋人、さとみの言葉にも上の空で歩いていた。
「この歩道橋がめんどいんだよね~」
さとみが顔をしかめている。
クラブに行くには目の前の歩道橋を使うのが一番近いのだ。
歩道橋・・・・・・そうか!琴美が歩道橋から突き落としてくれと頼んだ子だ!
「そうだったのか!」
思い出せて思わず声をあげた。
「何がそうだったのぉ~?」
腕に絡みつくように抱きついているさとみが不思議そうな顔をして聞く。
「お前にはかんけーねえよ」
「もう~」
そっけなく言われて頬を膨らませた。
その後、クラブであきらは友人たちと面白おかしく過ごしたが昼間の事が気になりウィスキーをグイッと煽ると立ち上がった。
「あきら~?どしたの?」
さとみが立ち上がったあきらに驚く。
「俺、先に帰るわ」
「え~っ!まだ12時だよぉ?」
他の友人たちもまだ早いと言うが、あきらはかまわずに席を離れた。
「あきらっ!あきら!ちょっと待ってよ!」
店を出たところで追いついたのはさとみだ。
「どうしたのお?さっきからおかしいよ?」
「お前には関係ないって言っただろ!」
あきらはしつこいさとみにぶっきらぼうに言った。
「あの女のせいだね!?あの女と話してからおかしくなったよ!?」
あの女とは杏梨と香澄のことだ。
「ああ!そうかもしれないな!じゃあな!」
あきらは腕を掴んでいたさとみを乱暴に突き飛ばして去って行った。
続く