「Love Step」過去⑤ | HAPPY DAY

HAPPY DAY

☆ベリーズ文庫(現代・ラブファンタジー・異世界レーベル)マカロン文庫・コミックベリーズ・マーマレード文庫・マーマレードコミックス・LUNA文庫・夢中文庫・ネット文庫星の砂にて執筆させていただいています。

「うぅ・・・・っ・・・・」


口に布きれを入れられ声を出せない。


杏梨は大きく首を左右に振る。


胸に吸い付いた少年の唇が離れた。


ホッとしたのもつかの間、ブラジャーと肌の間に果物ナイフが差し入れられた。


上に動かせば胸があらわになってしまう。


しかしナイフが怖くて動けない。


抵抗力は奪われ、両手がだらんと地面に落ちる。


その時、ブラジャーが切られ幼い胸があらわになった。


「んんんんんーーーっ!」


見られたくない、触られたくない一心で両腕で胸をかくそうとした。


その手は掴まれ、頭の上で押さえられてしまう。


頂きを吸われて、逃れようと必死になる。


「むぐーーーーっ!」


「大人しくしろ!」


頬を拳で殴られる。


あまりの痛さに意識が朦朧としてきた。


ゆきちゃん・・・・・


杏梨の意識はもう雪哉に会えない・・・それしかなかった。


朦朧とする意識の中でスカートがビリビリと破られる音が聞こえる。


「ほら、もっと抵抗しろよ!」


抵抗すれば静かにしろと言い、静かになればもっと抵抗しろと言う。


泣き叫んでいるのを見ると、性的欲求が高まる少年なのかもしれない。


もう一度、頬をパンパンと2回叩かれた。


「うっ・・・」



次の瞬間、少年は地面に飛ばされていた。


持っていた果物ナイフはどこかへ飛んだ。


少年は一瞬、何が起こったのか分からなかった。


目を見開くと、薄暗い中に背の高い男が立っていた。


それがわかった時、顔を蹴り飛ばされた。


「うっ!」


それだけでは納まらず、なんども少年は殴られた。



雪哉は学校へ行ったが、下駄箱には杏梨のうわばきがあった。


もう帰ったのか・・・。


校庭を覗くと、「あれ?雪哉さん」と言う声がした。


雪哉がその子を見る。


「あ!あたし、杏梨の親友の香澄です」


その子の名前は聞いた事があった。


「あぁ、杏梨はもう帰ったか知っているかい?」


「え?15分前に帰ったんですけれど・・・ 雪哉さんに会えるのを楽しみにして」


学校から家まで15分。


「そうか、入れ違いになったんだね ありがとう」


雪哉はお礼を言うと学校を出た。


杏梨が帰っているのならそれでいい。


雪哉は近道をする為に公園の中へ入って行った。


「ここは薄暗くてあぶないな」


ブツブツと呟いた時、どこからか声が聞こえた。


声と共にうめき声も。


「?」


雪哉は耳をこらし、音のする方へ近づいた。


お金のない学生がホテルへ行かず、公園でしているのかと思った。


それならそれでいい。


勝手にしろと思ったが、その時叩く音とうめき声が聞こえた。


雪哉は植え込みの向こうと認識し、静かに近づいた。


植え込みの向こうで男が何かに覆いかぶさっていた。


見覚えのある制服の上着が投げ出されている。


男の下でばたつかせている白い足が見えた。


どう見ても愛し合っているようには見えない。


雪哉は男を蹴り飛ばしていた。


男が離れると地面に横たわっている女の子を見て驚いた。


「杏梨っ!?」


まさか、杏梨だとは思わなかった。


「くそっ!」


雪哉は男が動けなくなるくらい殴った。



男が意識を失うと雪哉は杏梨の元へ行った。


「杏梨!」


杏梨は地面に横たわり、放心状態だった。


「杏梨!しっかりしろ!」


雪哉は自分のジャケットを脱ぐと、杏梨の身体に掛けて起こそうとした。


杏梨がおびえた目で雪哉を見た。


「いやーーーーっ!見ないでーーーーっ!」


杏梨はガタガタ震え、両手で身体をかくそうとした。


「杏梨、俺だ、落ち着いて」


殴られた顔は暗がりの中でも痛々しいくらいだった。


再び湧き上がる怒り。


おびえる身体を抱きしめると、華奢な身体は力を失った。


気を失ったのだ。


「杏梨?」


雪哉はポケットから携帯電話を出すと倒れている少年を睨みつけながら警察に連絡した。



あれから3年、杏梨は過去の殻を抜け出そうとしていた。



END