眠っているといいなんて言われてももう眠れない・・・。
無理だよ。
ゆきちゃんの腕の中にいて心臓がバクバクしているんだもん。
「・・・ゆきちゃん、やっぱり降ろして・・・」
玄関に入ると言った。
今度はすんなり降ろしてもらえた。
ミュールを履いていたせいかもしれない。
ミュールを脱いでリビングへ行く。
先にリビングに入ったゆきちゃんをまっすぐ見られない。
恥ずかしい。
「え・・・っと・・・ゆきちゃん、先にシャワーを浴びてね」
言ってしまってからハッとなる。
意識しすぎてなんか変な事を言ってしまったような。
雪哉の顔を見た杏梨は、頬はもとより胸元まで真っ赤になった。
雪哉が意味ありげに笑っていたからだ。
「それは誘っているのかな?」
とっさに出た言葉だと雪哉は分かっていたが、からかわずには入られない。
「ち、違うよっ!」
慌てたように大きくかぶりを振る杏梨だ。
「はぁ~ そんなに強く否定されると自信がなくなるだろう?」
雪哉は悲しそうに笑うと、杏梨の頬に手を伸ばした。
手の甲で頬を撫で、滑るようにして顎に手を添えると上を向かせる。
「ゆきちゃん・・・」
言葉を塞ぐようにキスを落とす。
優しく啄ばむような口づけ、そして震える下唇を甘噛みされる。
「・・・んっ・・・」
杏梨の甘い声が喉の奥から漏れる。
ゆっくり進まなければと思うのにやはり暴走気味の雪哉だった。
「やっと俺の腕の中に戻ってきた」
そう言って雪哉は抱きしめるとキスをした。
唇から首、そして鎖骨へと唇を滑らすと腕の中で僅かに震える杏梨だ。
雪哉は愛しそうに頬にキスをすると両肩の手を置いて少しの距離をとる。
「どうして・・・?」
「そんなに煽らないで欲しいな これでも理性で抑えているのだから」
「っ!・・・」
「そう、その恥ずかしそうな顔も俺を煽る 大きな潤んだ瞳で見つめられると抑えきれなくなる でも今日はたくさんの事が起こりすぎた 長い一日だっただろう?お前を早く休ませてあげなくては、とも思っているんだ」
杏梨の髪を一房すくうと唇に当てる。
「この香りもいけないな」
シャンプーの香りを吸い込んでけだるげに笑うゆきちゃんを見ていると何も考えられなくなっちゃうよ。
ここまでならいつものわたしたちの関係・・・。
更に・・・ゆきちゃんに愛してもらいたい。
愛されていると安心させて欲しい。
つづく