「Love Step」(205) | HAPPY DAY

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☆ベリーズ文庫(現代・ラブファンタジー・異世界レーベル)マカロン文庫・コミックベリーズ・マーマレード文庫・マーマレードコミックス・LUNA文庫・夢中文庫・ネット文庫星の砂にて執筆させていただいています。

「・・・そうですよ、惨めな気分になるので杏梨を連れて早く行ってください」


峻が無表情に言う。


「悪かった、迷惑をかけたね 杏梨、行こう」


大事な物を抱えるようにして杏梨の腰に手が置かれた。


「峻くんっ!ありがとう」


雪哉に保護される様に車に向かう中、杏梨は急いで振り向くと言った。



空いている手で車のリモコンを操作する。


ピッっと小さな音で、赤い車のドアロックが解除された。


助手席のドアを開けて杏梨を促す。


杏梨は一度不安そうな顔を雪哉に向けたが、優しい眼差しを見ると席に座った。


杏梨を座らせた雪哉は車の前を回り運転席に着いた。


「ゆきちゃん・・・」


「ん?」


「酷い事言ってごめんなさい・・・」


「杏梨に謝られると辛いな すべては俺のせいなのに」


「・・・」


「疲れただろう、目を閉じて休むんだよ」


雪哉は顔を近づけると杏梨の唇に軽いキスを落とした。


そしてエンジンをかけるとサイドブレーキを解除し発進させた。



長い一日だったな。

今はゆきちゃんが側にいるおかげで心が落ち着いた気がする。

さっきは絶望的だったから。

でも・・・なんだか空回りしていたみたい・・・。



前を走る車のテールランプを見ているうちに杏梨の目蓋は落ちていった。



25分ほどでマンションの地下駐車場に着いた。


途中で愛する女の子が眠ったのが分かった。


精神的にも、肉体的にも相当疲れているはずで、黙っていれば眠ってしまうと思ったから何も言わなかったのだ。


エンジンを切り、助手席を見ると俺のジャケットの裾に伸びた華奢な手を見つけた。



心が温かくなる。



雪哉の顔にこの上なく優しい笑みが浮かんだ。



杏梨を起こさないように静かにお姫様抱っこをしてエレベーターに乗り込む。


「ん・・・っ・・・」


エレベーターの中が眩しかったのか杏梨が身じろぐ。


「・・・ゆきちゃん」


眠そうな杏梨の声だ。


「もうすぐ部屋に着くよ」


額に唇を当てる。



さっきから暴走気味だな。

杏梨に触れないではいられない自分に苦笑いする。



「あっ!ぉ、降りるっ!」


「いいから動かないで ちゃんとベッドまで送り届けるから眠ってて」


しっかり抱かれて杏梨は降りる事をあきらめた。



続く


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