病院の待合ロビーを抜けると足取りは重くなった。
琴美さんに励まされて来ちゃったけれど・・・。
病院に着いてから、彩さんにちゃんと言えるか自信がなくなっていた。
病室にはゆきちゃんがいるかもしれない。
ふと売店の横に小さな花屋を見つけた。
杏梨は吸い込まれるように花屋に近づいた。
* * * * * *
可愛らしいピンク系の花束を胸に病室へ向かった。
峻と真緒の会話で病室は分かっている。
ここだ・・・。
ドアの前に立つと胸が痛いくらいにドキドキ暴れ始めた。
ノックをしようと上げた手が震えている。
勇気を振り絞って杏梨はドアをノックした。
トントン・・・。
ノック音の後に、中から「どうぞ」と言う声が聞こえてきた。
杏梨は静かにドアを開けた。
「杏梨ちゃん!」
ドアに立つ杏梨を見て彩は驚いた。
「彩さん・・・お加減はいかがですか・・・?」
ベッドの上に起き上がっていた彩を見て伺う。
見るところ、唇はピンク色で、頬の血色も悪くない。
お化粧をしていないのに、見惚れてしまいそうな美しさだ。
「まあ、きれいなお花、私に?」
「あ、はい」
杏梨はベッドに近づき、彩に花束を渡した。
「ありがとう・・・良く来てくれたわ 杏梨ちゃんに謝らなければと思っていたの 貴方が悪いとは言え、叩いたりしてごめんなさいね」
え・・・?わたしが悪い・・・?
本当に彩さんはそう思っているの?
「ぁ、彩さんっ!わたしは悪くないです どうしてそんな事が言えるんですか?お願いですから小細工をしてゆきちゃんを取らないで下さいっ!」
彩の言葉が引き金になって、杏梨は心の中をすべて吐き出してしまった。
そんな杏梨に彩は驚き唖然となった。
続く