その途端に、気まずい表情になる。
わたしは今の話は本当なのか聞いていた。
気まずい表情のまま峻くんはわたしに近づいた。
「杏梨・・・」
なんと言って良いのか、言葉につまる。
真緒もやって来て峻の隣に立った。
「杏梨ちゃん・・・たぶん、本当の事よ」
峻の変わりに真緒が答えた。
その時、どこかで携帯の着信メロディーが聞こえた。
あ・・・、ゆきちゃんだ。
急いでベッドから降りると、ソファー近くに置かれていたバッグに駆け寄った。
「も、もしもし・・・」
『杏梨、今どこにいる?』
聞こえてきたのは心配そうなゆきちゃんの声。
「・・・」
『あぁ、峻くんと一緒なんだね?』
「・・・うん」
『今日は家に帰れないかもしれない 彩が興奮状態なんだ』
「え・・・?病院に泊まるの・・・?」
『そうなるかもしれない』
雪哉としても杏梨が心配で帰りたいのだが、帰ろうとすると彩が興奮状態になり泣き叫ぶので放ってはおけないのだ。
「・・・わかった」
『・・・杏梨、さっきはすまない お前を疑っているわけじゃないんだ』
「・・・うん」
杏梨はゆっくり携帯電話を閉じた。
「雪哉さん、病院に泊まるのか?」
話を聞いていた峻が聞く。
「う、うん・・・彩さんが興奮状態だって・・・」
ゆきちゃんは彩さんに同情しているの?それとも・・・好きなの?
自分の事を好きって言ってくれた事が夢のように思えちゃうよ・・・。
「ごめんな?姉貴が・・・」
今にも泣きそうな杏梨に何と言って良いのか分からない。
大きくかぶりを振った杏梨は、しゃがむとバッグの中へ携帯電話をしまった。
今は何も考えられないよ・・・。
彩さんがした事だとしたら・・・
自分の人生を棒に振ってまでもゆきちゃんを愛している事実に頭が混乱していた。
続く