「ゆきちゃん・・・わたし・・・」
失神してしまった彩さんを見て、わたしの頭の中は真っ白になった。
「杏梨、・・・名刺まであって・・・本当に記者に言っていない?もう言った、言わないの問題ではないんだ 真実が知りたい」
俺は杏梨を疑っているのか?
「ゆきちゃんっ!」
ゆきちゃんもわたしが言ったと思っている・・・。
でも、名刺を持っていたのは事実だから何も言えない・・・。
きっと、具合の悪くなった日に何か言ってしまったんだ。
杏梨の具合が悪くなったのは琴美が昼食に薬をもったせいだ。
吐き気や眩暈、酷い時には記憶障害が出る薬だった。
杏梨はじりじりと後ずさる。
「杏梨?」
「・・・っ、ごめんなさいっ!」
本当に自分のせいなのか、わからないが杏梨は謝っていた。
悲しそうな顔・・・。
ゆきちゃんを悲しませちゃった・・・。
「ごめんなさいっ!」
今にも泣きそうな顔でもう一度謝った杏梨はオフィスを飛び出した。
「杏梨っ!」
雪哉がオフィスのドアを開けた時には杏梨の姿は店の外へ消えていく所だった。
くそっ!
俺は何をしているんだ!
「雪・・哉さん・・・」
壁に手をつきうなだれた雪哉に彩の小さく呼ぶ声が聞こえた。
その声に振り向く。
「彩・・・大丈夫か?」
彩は身体を起こして手をこめかみの所に置いていた。
「私・・・ごめんなさい・・・雪哉さんに迷惑を・・・」
* * * * * *
杏梨は辛さで胸が押しつぶされそうになりながら店を出た。
涙が視界を曇らせる。
ドンッ!
目の前の何かにぶつかり、身体が飛ばされそうになった。
腕を掴まれ、何とか転ばずに済む。
「す、すみません・・・」
急いでぶつかった相手に頭を下げた。
「っ!杏梨!?どうしたんだよ!?」
ぶつかった相手は峻だった。
尋常ではない杏梨の様子に峻は驚いた。
続く