バレンタインデーにあの2人がデートしないわけはなく、昼間、父親に電話をすると案の定、2人はデート中だった。
「もし仕事が早く終わったら様子を見に行って欲しい」
と、言うのは貴美香さんだ。
デートをしていても杏梨の事が気になるらしい。
「杏梨の様子を見に行くので、気にせずにゆっくりして来て下さい」
そう言って貴美香を安心させたのだった。
ピンポーン
インターフォンの音に杏梨はハッと身を起こした。
「誰だろ・・・」
インターフォンの画面に行くと、杏梨の顔がぱあっと明るくなった。
「ゆきちゃん!」
パタパタと廊下を駆けて、玄関にすっ飛んで行く。
玄関のロックを解除すると、寒そうな雪哉が立っていた。
「ゆきちゃん、どうしたの?」
まさか来てくれるとは思ってもみなかったから、テンションが上がり頬を上気させていた。
「父さんたち、デートしているからね」
「あーっ!ママったらわたしが心配でゆきちゃんに電話したんだね?」
「そうじゃないよ 電話したのは俺 それより、中へ入れてくれないの?」
あ・・・まだ玄関に立たせたままだった。
「ごめんなさい、早く入ってっ!」
慌てて壁に身を寄せて雪哉を上がらせた。
「夕飯は食べた?」
リビングに入ると雪哉が聞く。
「ううん まだ・・・」
キッチンのテーブルで1時間ほど眠っていたようだ。
「寝てただろう?」
「え?な、何で分かるのっ?」
「よだれと頬に線が付いている」
不意に頬を優しく突っつかれる。
うわぁ・・・っ・・・顔が赤くなっちゃうよ・・・。
そしてハッとして手の甲でよだれを拭こうとしたのを雪哉が笑っている。
「よだれは嘘だよ 頬に線は付いているけどね?」
「・・・もうっ」
赤らめた頬をプクッと膨らませる。
「ふくれっつらしないで お詫びにお寿司をご馳走してあげるから」
「本当っ!?」
「もちろん、特上をね」
「うれしいっ♪かけてくるね」
杏梨は近所のおすし屋さんに電話をかけに行った。
続く