「Love Step」(136) | HAPPY DAY

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☆ベリーズ文庫(現代・ラブファンタジー・異世界レーベル)マカロン文庫・コミックベリーズ・マーマレード文庫・マーマレードコミックス・LUNA文庫・夢中文庫・ネット文庫星の砂にて執筆させていただいています。

「ゆずるさん、もしかしてゆきちゃんに髪の毛をやってもらいに来たんですか?」

感慨深げに成長した杏梨を見ていると、小首を傾げてゆずるが顔を出した理由を聞いた。

「まさか、雪哉に?・・・恥ずかしいでしょ?」


そう言ってきれいに微笑む姿は女優、冬木 ゆずるなんだなぁ~と感心してしまう。
毎日こんなにきれいな奥さんを見ている旦那様の健太郎さんは幸せ者だなぁ。
あ・・・でも毎日ゆきちゃんの顔を見られるわたしも幸せなのかも♪


「・・・ちゃん?杏梨ちゃん?」

「あ・・・」

自分の世界に浸っていたようで、ゆずるさんが何を言ったのか分からなかった。

「なんか良いことでもあったの?顔がお日様みたいにほころんでいるわね?」

「え・・・そ、そんな事ないです・・・」

ゆずるの指摘に顔が一気に赤くなる。


一昨日の夜の事は思い出したくない出来事なのに、それでも優しかったゆきちゃんに安心しているわたしがいる。


「そうだ!どうしてゆきちゃんだと恥ずかしいんですか?」


わたしはゆきちゃんに髪をいじられるとすごく気持ちいって思っちゃうのに。


「姉弟ってそう言うものなのよ 今日は新しいネイリストが入ったからって呼ばれたの」

「もしかしてカタログ撮影のモデルに?」


今日は朝からカメラマンさんや雑誌編集者さんが来ている。


「そんな所でいつまで立ち話をしているつもりなの?暑いだろう?」

雪哉の声に顔を入り口に向けると戸口に寄りかかり涼しげな表情で2人を眺めていた。



* * * * * *



新しく出来たネイル専用の個室に初めて入った杏梨は壁を飾る色とりどりのマニキュアの瓶を見て感嘆の声を上げた。

「うわぁ~すごくきれい・・・」


こんなにたくさんのマニキュアを見るのは生まれて初めてだ。


「姉さん、杏梨 彼女はネイリストの黒田 琴美さん」

真っ白なテーブルの側に立っていた女性は3人が入ってくると近づいてきた。

「はじめまして 黒田です よろしくお願いします」

緊張した面持ちでゆずるに挨拶をしている。

「はじめまして 今日はよろしくお願いします」

ゆずるもにっこり笑顔で挨拶をすると琴美が呆気にとられた顔になる。

「・・・私、女優さんをこんなに近くで見たのは初めてなんです なんだか緊張してしまって・・・手が震えそうです」

「あら、女優って言っても今は普通の主婦よ?手が荒れて恥ずかしいくらいなの 何とかボロが出ないようにしてね?」

2人のやり取りを横で聞きながら杏梨はどうしてもきれいなマニキュアの瓶に目が行ってしまう。

琴美はそんな杏梨にゆずるから視線を移した。


この子が・・・。


琴美はまじまじと斜め前に立っている杏梨を見つめた。


私たち家族の人生を狂わせた少女。


琴美は怒りを表情に出さないように前で組み合わせた手をギュッと握った。


続く

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