でも・・・美容師の仕事をしている時のゆきちゃんは嫌。
だっていつもお客様に笑顔で接するから。
今日は仕事中のゆきちゃんが見られてうれしかったけど、嫌な面もあった。
お客様のカットをしている時、親しげに会話をするゆきちゃんはわたしの知らないゆきちゃんだった。
完璧な嫉妬・・・。
はぁ~。
些細な事にも嫉妬してしまう自分が嫌になる。
「――なったんだい?」
ぼうっと雪哉の方を身ながら考え事をしていた杏梨は話しかけられたのにも気づかない。
「杏梨?」
名前を呼ばれてハッとなる。
「えっ?な、なあにっ?」
「峻くんといつの間に親しくなったんだい?」
「べ、別に親しいわけじゃないよ?」
彼がなぜ杏梨を誘うのか気になった雪哉は聞くつもりはなかったのだが、不意に言葉が出ていた。
* * * * * *
あっ!また手を置いたっ!
杏梨は斜め前に座る彩が雪哉の腕に触れるのを見るたびに落ち着かない気持ちになって行く。
親しげな仕草に杏梨の胸はグサッとくる。
2人は楽しそうに話をしている。
店内に流れる音楽が耳に入って2人の会話が聞こえない。
「はぁ~」
がっくりと方を落ち込ませいつの間にかため息が出ていた。
それを見た峻は杏梨の目の前に自分が取り分けたシーザーサラダをドンと乱暴に置いた。
「わわっ こぼれちゃうよっ!」
驚いて隣に座る峻を見る。
「食べろよ」
怒っているのかと見てみればにっこり笑いかけられる。
「い、いただきますっ」
杏梨はフォークを手にするとおいしそうなシーザーサラダを口に運ぶ。
あ~ おいしいっ♪
杏梨は黙々とサラダを口に運んだ。
お昼のお弁当とさっきのコーヒーだけしか食べていない杏梨はお腹が空いていた。
杏梨の食べっぷりを見ていた峻は更に顔が緩んでくるのが分かった。
なんか俺って単純。
杏梨がずっと姉貴たちを見ていて俺の事を無視しているみたいで気に入らなかった。
乱暴に皿を置いたら黒目がちの大きな瞳で睨まれてそれがうれしかったりする。
「杏梨、食べたいものを注文しろよ?」
杏梨の食べている所を見ていると雪哉さんが言う。
すかさず俺は杏梨にメニューを差し出した。
「あ・・・りがと」
フォークを置いて杏梨はメニューを開いた。
続く