親しげに笑いかける彼を見て思わず離れろと言いたくなる。
「あら、杏梨ちゃん こんにちは」
雪哉の隣にいた彩が杏梨に気づき声をかける。
「こ、こんにちは」
「峻、杏梨ちゃんと何の話をしていたの?」
彩が不安げな杏梨を見てから峻に聞く。
「夕食に誘ったんだけど断られた」
彩は耳を疑った。
峻が断られるなんて・・・。
峻の残念そうな言葉を聞いた雪哉は「さすがだ!杏梨」と思わず声が出そうになった。
「あら、峻が断られちゃうなんて」
きれいなローズピンク色に塗られた唇でフフッと笑う。
「杏梨、良いだろ?雪哉さんからも言って下さいよ」
峻は雪哉に助けを求めたが勧めるわけにも行かない。
雪哉本人が一番行って欲しくないと思っているのだから。
それに峻が杏梨を呼び捨てで呼んだ事にも内心腹がたつ。
「雪哉?」
黙っている雪哉に彩が名前を呼ぶ。
「いや・・・峻くんは芸能人だからね 高校生の杏梨を連れ出すのは望ましくない 勧められないな」
杏梨が峻の隣で雪哉の言葉にコクコク頷いている。
「じゃあ、私たちも一緒に行けば良いんじゃない?」
彩が峻に助け舟を出した。
自分も雪哉と食事が出来ればうれしい。
「これから仕事があるんだろ?」
その為にヘアーメイクに来たのだ。
「1時間位で終わるわ 雑誌の対談だけだから」
対談場所はこの近くの高級ホテル。
移動に時間を取られない。
「ね?お願い 私も雪哉と久しぶりにお食事したいわ」
にっこり微笑み少し甘えた声で言う。
その親しげな仕草に杏梨はムッとしてしまう。
雪哉は少し間を置いてから了承した。
峻が杏梨をどう見ているのか知りたかったから一緒に食事に行く事を受けたのだ。
続く