ベッドに入った杏梨は顔がにやけてしまうのを止められない。
でも嬉しさの中にも疑問も感じているの。
だって、不思議なんだもん。
なんのとりえもない男の子みたいなわたしの事を好きなんて。
ゆきちゃんの今まで付き合ってきた人とわたしは全然違う。
カリスマ美容師として活躍しているゆきちゃんの周りはきれいな人がたくさんいる。
わたしはトラウマもかかえているし・・・だからなぜわたしの事が好きなのか不思議なの。
「はぁ~」
一つため息を吐くと小さな明かりの下で寝返りを打つ。
・・・トラウマは良くなった気がするのは気のせいかな。
キスされても大丈夫だった。
少しは怖かったけどゆきちゃんの腕の中にいると安心する。
ゆきちゃんならばわたしのトラウマを克服させてくれるに違いない。
妹として見られていたんじゃなくて良かった。
幸せな気分で杏梨は眠りに就いた。
雪哉もベッドに横になり杏梨の事を考えていた。
俺に触れられて頑張ろうと必死だったな・・・。
杏梨の必死の顔を思い出しフッと口元を緩ませる。
ただの隣のお兄ちゃんでなくて良かった。
杏梨を愛していると気づいたのはあの事件の時だった。
近所の公園で男に押し倒されている所を見て今まで感じた事のない感情が爆発した。
杏梨を押さえつけていた男を気を失わせるほど殴った。
事件後、精神的なダメージを受けた杏梨を俺は見守ることしか出来なかった。
ピピピピピ・・・
杏梨は腕を伸ばして目覚まし時計を止めた。
いつもならばもうひと寝入りするのだが今日の目覚めは格別に良かった。
なんか、自分が生まれ変わったような気がする。
「んっ!」
ベッドに起き上がり両腕を上げて伸びをした。
続く