それを聞く前に俺の気持ちを打ち明けるべきじゃないのか?
杏梨を愛していると。
「わたし・・・」
杏梨の上ずった声がした。
「杏梨、その前に誤解を解いておきたいんだけど?」
「ご・・かい?」
潤む瞳で小首を傾げ、雪哉を見つめる。
「そう、俺に今彼女はいない」
今朝、杏梨は彼女がいるなら分からないようにしてよと言った。
「彼女が・・・いな・・い?」
ポカンと口が開いたままになっている。
そんな顔を他の男にして欲しくない。
思わずキスしてしまいそうになる。
そんな事を考えてしまった雪哉は考えを振り払うように咳払いを一つした。
「どこからそんな事思いついたんだ?」
彼女がずっといなかった訳ではないが、ここ1年ばかりはいない。
杏梨を愛していたが、時には女が必要な時があったのも確か。
「だって、ゆきちゃんから女の人の香水の香りがしたんだもん」
ふるふると首を横に振る。
「いつ?」
雪哉が深く考え込むような顔つきになる。
「・・・遅く帰ってきてホットミルクをこぼした時」
言いたくなかったのかぼそっと言う。
あの日・・・あぁ エリカに抱きつかれた時に香水が付いたのか。
職業柄、女性の香水に慣れてしまっていて特に気にしていなかった。
「ほらっ!思い出したっ!」
信用されていない視線に雪哉は大きくため息を吐いた。
「匂っていたとしたらCM撮影中に付いたんだよ」
「CM撮影中に付いたって、どうやったら付くのっ?」
「それは・・・」
抱きつかれたって言ったらひかれるんだろうな。
「教えて、どうしたら付くの?」
「抱きつかれて――」
「やっぱり彼女なんだ」
どんどん話が変になっていく。
雪哉は立ち上がると杏梨の隣に移動した。
続く