小刻みに揺れる瞳を見て雪哉は後悔したが口付けは止められなかった。
抱きしめた華奢な身体が震えている。
お前が始めた事だ、杏梨・・・。
嫌われても杏梨が傷ついてもこのまま進もうとした。
震える唇はすぐに雪哉の舌が口内に入る事を許してしまう。
お互いの鼓動が速度を増していく。
雪哉は執拗に唇を食み続けた。
雪哉のキスを受け杏梨は次に来る最悪な感情が来ない事に気づいた。
金切り声や嫌悪感が出ることもなく、熱に浮かされたようにキスを受け入れている。
悲鳴を上げるよりもっとゆきちゃんのキスが欲しい。
だけどキスを知らない杏梨はしだいに慣れないキスでうまく息が継げなくなる。
杏梨の足が力を失いガクッと崩れそうになり、雪哉のキスは歯止めがかかった。
目を閉じて苦しそうに息継ぎをしている杏梨。
雪哉は杏梨の膝の裏に腕を差しいれ抱き上げた。
「ゆ、ゆきちゃん!?」
「分かっただろう?子供が大人をからかえば困った事になるんだ」
ベッドに運ばれ降ろされた杏梨は身を硬くした。
「こ、困らないよ」
強がりを言う杏梨に雪哉は苦笑いを浮かべる。
雪哉の首に腕が回る。
「杏梨・・・」
「早くキスして・・・」
「・・・杏梨、こうしないか?少し時間を置こう 考えてそれでも俺に忘れさせてもらいたいと思うなら・・・しよう」
ここまで来て杏梨を奪いたい気持ちを抑えるのは並大抵な事じゃない。
だが、杏梨には考える時間が必要だ。
杏梨を抱きしめたままベッドに横になる。
無言のままの時間が過ぎていく。
そして杏梨の小さな寝息が聞こえてきた。
続く