「おはよう 杏梨」
「お、おはよう・・・」
雪哉はぼうっと突っ立っている杏梨に座るように言う。
テーブルの上にはハムエッグとグリーンサラダのお皿が置いてあった。
「どうして?ゆきちゃん 寝ていないでしょう?」
「送っていくよ」
カフェオレの入ったマグカップを杏梨の目の前に置くと言う。
「いいよ、仕事まで寝ててよ」
なんとなく言葉がつっけんどんになってしまう。
「足、大丈夫だったか?」
「大丈夫だよ 大げさだったみたい」
すぐに冷やしたおかげで水ぶくれはまぬがれた。
* * * * * *
学校まで行く間、きまずい雰囲気だった。
ゆきちゃんの顔がまともに見れないよ・・・。
「杏梨、何かあったのか?」
「えっ!?」
「ほとんど寝ていないだろう?」
「・・・」
「俺と暮らすのが嫌になった?」
突然の言葉に杏梨はビックリして雪哉を見た。
「なんでそんな事言うの?」
どこからそんな事を思いつくのか不思議だった。
「いや・・・杏梨の様子を見ていると・・・」
雪哉は自信を無くしそうだった。
「ゆきちゃんの方こそ後悔しているんじゃないの?」
そうだよ、彼女も家に連れてこられないし。
わたしの世話も大変だし。
「何言ってんの?」
「わたしがこんなんだから・・・わたしが一緒に住んでいるせいで彼女連れて来れないし、でもっ!彼女の事はわたしに分からないように付き合って欲しかった」
我侭を言っているのは頭では分かっているのに口は止まらない。
心に留めておいたのに言ってしまっていた。
「杏梨、何を言っているんだ?」
雪哉には杏梨の言っている事が理解できなかった。
「わからない振りなんかしないでっ!」
杏梨はそう言うとそっぽを向いた。
「誤解があるみたいだ、杏梨 ちゃんと話し合おう 迎えに来るからメールしろよ?」
「話したくない 一人で帰れるからメールしない」
ちょうど車は学校近くのいつも停めるスペースに停まった。
停車したのが分かると杏梨はドアを開けて出ようとした。
「杏梨!」
杏梨の手首が掴まれた。
「このままで良いわけがないだろう?」
真剣な雪哉の眼差しに杏梨は唇を噛んだ。
「今日はなるべく早く帰るから」
そう言うと掴んでいた手を離した。
続く