「どうした?」
杏梨が顔をしかめた原因は今着ている服装だった。
なんて酷い格好をしているんだろう・・・。
髪型と似合わな過ぎて顔を思わず顔をしかめたのだ。
だけど雪哉に「どうした?」と心配そうに聞かれてかぶりを振っていた。
「どうした?言ってみて?」
「ううん 何でもないの ゆきちゃん ありがとう やっぱりゆきちゃんは凄いね」
どんな女の子でもきれいに変えてしまう魔法使いのような手。
「杏梨、明日 買い物に行かないか?」
「え・・・・?」
「杏梨に似合う服を買いに行こう」
「明日は土曜日だよ?ゆきちゃん 忙しいし・・・いいよ」
そう断ってみたものの今持っている服はこの可愛い髪形には不似合いだ。
もう一度鏡を覗く。
肩までの長さでふわふわと緩くカールした髪。
やっぱりお洋服欲しいかも・・・。
でも香澄ちゃんに一緒に買い物に行ってもらえれば・・・。
「付き合いたいんだ」
そう言ってパソコンが置かれているテーブルに近づくと、引き出しを開けてスケジュール帳を取り出すとパラパラめくっていく。
「杏梨、11時から13時までなら空いているよ」
「それってお昼休みでしょ?」
いつも忙しくてお昼を取る時間もないのに、お買い物に付き合ったらゆっくりする時間がなくなってしまう。
「昼飯ならさっと外で食べればいいだろ?」
「ゆきちゃん・・・」
こういう時のゆきちゃんは絶対にゆずってくれない。
それでも杏梨は素直に頷けない。
雪哉はため息を漏らした。
杏梨は頑固だな。
「一緒に外で食べてから服を見に行こう 俺の心配はしないでいいんだ それにここで休んでいると捕まるからね」
軽くウインクされて杏梨の胸がトクンと跳ねた。
もう・・・様になりすぎているよ・・・。
杏梨はにっこり笑って頷いた。
明日の事を考えるだけで顔がにやけてしまう。
ゆきちゃんと外に出かけるのは久しぶり。
帰りの車の中は行きの落ち込んだ杏梨ではなく、生き生きとした杏梨に変わっていた。
続く