「こんなにたくさん・・・食べられないよ」
みれば2人前はありそう。
山盛りに盛られた皿がもう一つある。
細身に見えるけど、きれいに筋肉のついたゆきちゃんは驚くほどたくさん食べる。
「しっかり食べろよ?」
チャーハンは好きだけど今は食欲がなかった。
ゆきちゃんにじっと見られていたわたしはレンゲに手を伸ばした。
~~~♪~~~♪
雪哉の携帯電話が鳴った。
「はい」
『雪哉さん、杏梨ちゃんは大丈夫でしたか?』
心配そうな声のめぐみだった。
「ああ、軽症ですんだよ」
『それは良かったです あの・・・2時に笠原様の予約が入っていますが』
笠原 リリ子 今人気絶頂のモデルだ。
「悪いけど電話して後日か、もしくは誰かにやらせて欲しい」
『雪哉さん!そんなの無理です!』
会社経営者の父を持つお嬢様でかなりの我がままだ。
彼女に嫌な思いをさせられたスタッフはかなりいる。
めぐみの声がチャーハンを黙々と食べていた杏梨の耳にも聞こえた。
杏梨は雪哉の元へ行くと携帯電話を取り上げた。
「おい、杏梨っ!」
携帯電話を耳につける杏梨を睨む。
「めぐみさん、ゆきちゃん 行かせますから」
『杏梨ちゃん、助かるわ 雪哉さんの事よろしくね』
雪哉に携帯電話を取られないうちに杏梨は返事をして切った。
「杏梨、勝手な事を言うなよ」
雪哉が怒った顔になる。
「わたしは大丈夫だからお店に行ってよ」
なだめるようにニコッと笑う。
「24時間は杏梨から離れたくないんだ」
医者は24時間、様子を見て欲しいと言っていた。
「車にぶつかったわけじゃないから大丈夫だよ 痛いのは摩擦で擦りむいた所だし 予約の人が終わったら帰って来てくれる?わたしはお昼寝しているから」
杏梨の言葉に雪哉は渋々頷いた。
続く