「君が・・・」
三木 彩の弟と知って驚いた。
「彼女、大丈夫ですか?」
雪哉の腕に支えられて俯いている杏梨を見て更に心配そうな顔になった。
「ああ とりあえず検査結果は問題なかったよ 杏梨を休ませたいので失礼するよ」
峻をその場に残し、雪哉は杏梨を大事そうに抱えながら歩き始めた。
どんな関係なんだ?あの2人・・・。
姉の彩が彼を好きな事は知っている。
何度も好きだと雪哉にほのめかしてもいつもはぐらかされると姉貴はぼやいていたな。
姉貴は男性から見たらお嫁さんにしたいタイプ。
雪哉さんはそんな姉貴に想われても何も感じないのだろうか。
2人の後ろ姿が廊下を曲がり視界から消えた。
あの子を迎えに来る位だから相当親しいんだろうな。
* * * * * *
雪哉の車の助手席に座った杏梨は事故のショックからなのか一言も口を聞かずに窓の外ばかり見ていた。
雪哉もマンションに帰ってから話せば良いと話しかけなかった。
マンションの地下駐車場の駐車スペースに車を停めるとエンジンを切る。
杏梨は無言で車から降りた。
少し足を引きずって歩いている。
雪哉はそんな杏梨を見て心の中でため息を吐いた。
もっとひどい事になっていたかもしれない。
ちゃんと杏梨に言い聞かせなければ。
* * * * * *
雪哉の作ったカフェオレをソファーに座った杏梨は飲んでいた。
まだ手は冷たくカップを両手で囲むように持っている。
雪哉は自分のブラックコーヒーを入れて杏梨の対面のソファーに座る。
「どうしてバイクで行ったんだ?一つ間違えれば大事故だったかもしれない」
「・・・・」
雨の日に原付バイクで出かけたのはいけないと思っていたがすぐに止むと思ったし、自分勝手な考えだけど雪哉の所為でもあると思ってしまった。
「杏梨?」
「だって・・・だって!ゆきちゃん眠ってたじゃない!何時に帰ってきたか分からなかったし・・・起こせるはず・・・ないじゃん・・・学校に行こうと駐車場から出たら降っている事に・・・」
杏梨は思わず立ち上がって言っていた。
瞳が潤み今にも大きな目からは涙がこぼれそうだ。
続く
今日中にもう一話更新します
モモ