雪哉は静かにみんなの話を聞いていた。

杏梨は一度決めたら曲げないほどの頑固者。

杏梨の言葉に大人たちは困った。


「・・・俺の所に来ればいい 部屋も空いているし」

雪哉はコーヒーカップをテーブルに置くと口を開いた。


雪哉の言葉はみんなを驚かせた。

杏梨も一瞬唖然となったがすぐに大きくかぶりを振る。


「ゆきちゃん、何言ってんの?そんな事出来ないよっ!」


「ワシントンには行きたくないんだろ?」


そう言われて杏梨は言葉が出ない。


「それっていい考えじゃないっ!」

ゆずるが両手をポンと打って賛成した。


「杏梨ちゃんは我が家が新婚家庭だから遠慮しているんでしょ?雪哉の所なら部屋も余っているし」

困ったように視線を泳がせている杏梨にゆずるが言う。


「そうね、雪哉君の所ならママも安心できるわ」


雪哉の発言に杏梨を除いた全員が賛成しているようだった。


「そんな・・・ゆきちゃんに悪いと思わないの?ママ」


「そうね~ 雪哉君、彼女は杏梨がいない時に呼んでね」


ゆずるや健太郎が笑った。


「何言ってるの!ママっ!」


そりゃ・・・ゆきちゃんと一緒ならば安心できる。

強がったけど1人暮らしなんて出来るわけがない事も分かっている。


「杏梨、みんなが杏梨の事を心配しているんだ 俺の所で良いね?」

戸惑った表情を浮かべている杏梨に雪哉が言う。


「う・・・・」

仕方なくコクッと頷くと雪哉が不敵な笑みを浮かべた。


それを見ていたのはゆずる。


何か楽しそうね?雪哉。


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