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未曽有のアマゾン森林火災、豊かな動物たちへの影響は
8/28(水) 7:12配信
地球上にいる生物種の10分の1が生息するアマゾンの熱帯雨林で、大規模な森林火災が発生している。ブラジルの森林で9000件もの火災が一斉に発生し、ボリビア、パラグアイ、ペルーにまで燃え広がった。
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原因の大半は、森林を手っ取り早く伐採するために人間が火を付けたことと見られ、加えて乾期のために火の勢いが増した。現在も膨大な件数の森林火災が続いており、ブラジル国立宇宙研究所(INPE)によると、昨年の同期に比べその数は80%も増加しているという。これらの火災は宇宙からも見えるほどだ。
アマゾンには、膨大な種類の野生生物が生息する。森林火災がそれらに対して及ぼす影響は、短期的なものと長期的なものの2段階ある。
「アマゾンの生物は火事に適応していません」と、ブラジルのマナウス市にある国立アマゾン研究所(INPA)の研究者で生物多様性モニタリングを専門とするウィリアム・マグナスン氏は言う。
米国の森林のように、山火事が、健全な生態系の維持に重要な役割を果たしている場合もある。そこに生息する動物は山火事に対処できるように適応しているだけでなく、繁栄のために山火事を必要としているものも多い。例えば、米国西部原産のセグロミユビゲラは、焼け跡の木にしか巣を作らず、焼けた木に群がる甲虫を餌にする。
しかし、アマゾンは違う。
アマゾンの熱帯雨林がこれほどの豊かさと多様性をもつのは、火災らしい火災がないからだとマグナスン氏は言う。自然に発火することもあるが、普通は小規模で終わり、地面の近くが焼けるだけだ。それに、雨ですぐに消えてしまう。
「基本的に、ここ数十万年から数百万年の間、アマゾンが焼けてしまったことはありませんでした」とマグナスン氏は説明する。時々火事が起こらなければ全体が枯れてしまうオーストラリアのユーカリの林などとは違い、アマゾンの熱帯雨林は火事が起こることを想定していないのだ。
短期間に大量の野生生物の命が奪われている可能性があると、米オハイオ州立大学環境天然資源学部の准教授で、コロンビアのアマゾンでフィールドワークを行なっているメザイカ・サリバン氏は警告する。
氏によれば、森林火災の真っただ中に動物ができることは非常に限られている。穴を掘って身を隠すか、水に潜るか、あるいはほかの場所へ逃げるかだ。このような状況では、多くの動物が炎や熱、煙によって命を落とすという。
「勝敗はすぐに決まります」とサリバン氏は言う。「火事に適応していない生態系では、適応した生態系よりはるかに多くの動物が敗者になります」
森林火災のときに有利な特徴は、移動の速さだ。ジャガーやピューマなど、大型で速く動ける動物は逃げられるかもしれないとサリバン氏は言う。一部の鳥もそうだ。
しかし、ナマケモノやアリクイのように動きの遅い動物や、カエルやトカゲのように小さな生き物は、火の手から逃れられずに死んでしまうだろう。「上に向かって逃げても、登った木が燃えてしまうかもしれません」とサリバン氏は続ける。その場合も死ぬことになるだろう。
これは難しい質問だ。米国、欧州、オーストラリアでは種の分布について多くのことがわかっているが、アマゾンではまったく事情が異なるとマグナスン氏は言う。アマゾンの熱帯雨林にすむほとんどの動物については生息域の解明が進んでおらず、危機にひんしている種を特定するには不十分だという。
しかしながら、特に懸念される種はある。
2011年に発見されたミルトンズ・ティティモンキーというサルは、現在火災に襲われている、ブラジル南部のアマゾンでしか目撃されていない。最近発見された「ムラのセマダラタマリン」と呼ばれるサルも、ブラジル中部の狭い地域に生息しており、火災の広がりによって危険にさらされていると、ブラジル野生動物保護協会の会長カルロス・セザール・ドゥリガン氏は述べている。これらは特定の地域に固有の種である可能性があるという。「このような固有種の多くが失われているのではないかと心配しています」
大きな河川や湖などは、短期的にはほぼ安全だ。しかし、小さな川にすむ動物は窮地に陥る可能性がある。小さな川は生物多様性に非常に富んだ場所だが、「真上で火が燃える」のだとサリバン氏は説明する。水中に生息する両生類は、呼吸のために体の一部を水面から出しておく必要があり、危険にさらされることになる。火災によって短期間に水質が変化し、生物がすめなくなることもありうる。
これが2つめの大きな問題だ。「長期的な影響は、より壊滅的な結果を生じるでしょう」とサリバン氏は述べる。熱帯雨林が焼けた部分では、生態系がすっかり変わってしまう。アマゾンの熱帯雨林では、茂った植物が天蓋のように空を覆うため、日光の大部分は地面まで届かない。この天蓋が火災で消失すれば、光が差し込むことで、生態系全体のエネルギーの流れが根本的に変化する。その影響は食物連鎖全体に及ぶ可能性があるという。
一変した生態系で生き延びるのは、多くの種にとって非常に困難だ。例えば両生類の多くは、背景に溶け込むように、樹皮や木の葉に似た質感や色の皮膚を持っている。「その背景が突然変わってしまったら、カエルは無防備なまま危険にさらされることになります」とサリバン氏は説明する。
またアマゾンの多くの動物は、特定のニッチな生息環境で生きられるように進化し、適応してきた。例えばオオハシは、長いくちばしを割れ目に差し込んで、他の種では届かない場所にある果実を食べることができる。火災によって餌になる果実が失われれば、その地域のオオハシの個体数が危機的に減少する可能性がある。
クモザルは、競争の激しい場所を避けて、天蓋のように茂る木の上部で生活している。「この天蓋がなくなったらどうなるでしょう?」とサリバン氏は問いかける。「競争の激しいところに入って行かざるをえなくなります」
焼け落ちた森で「勝者」となるのは、猛禽類などの捕食者だけだろうとサリバン氏は話す。遮るものがなくなって、狩りが容易になるからだ。
マグナスン氏が最も懸念するのは、森林の消失による余波だ。
「アマゾンの熱帯雨林がなくなれば、99%の種が失われます」と危機感を示す。森林火災が1回限りのことならそれほど心配ないかもしれないが、問題は、ブラジル政府が森林伐採を奨励する方向に大きく政策を転換したことだ。マグナスン氏は、ブラジルのボルソナロ大統領がアマゾンを商用に開放するという公約を掲げていることについて、「基本的に法的な制限がなくなり、誰でも好きなように利用してよいという政治的なメッセージが送られています」と言う。
環境保護を掲げ、事態を懸念する市民らはソーシャルメディアで訴えかけた。8月21日にはツイッターでハッシュタグ#PrayForAmazonas(アマゾンに祈りを)がトレンド入りし、多くの人がボルソナロ政権の方針を批判した。ほかにも、世界的な牛肉の需要増が、牧場用の開墾を加速させる原因になっていると懸念する声もある。環境問題の専門家も、「地球の肺」とも呼ばれるアマゾンを焼くことが気候変動に及ぼす影響を訴えている。8月22日には、勢いづいた#PrayForAmazonasからハッシュタグ#ActForAmazonas(アマゾン保護のために行動を)も派生した。
ブラジルのパラ州、マットグロッソ州およびロンドニア州には、アマゾン熱帯雨林の南の境界に沿って「森林破壊の弧」と呼ばれる地帯があるとマグナスン氏は説明する。そこでは森林火災が熱帯雨林の境界を北に押し上げており、境界が永久に変わってしまう可能性もあるという。
この地帯について「わかっていることはごくわずかです」とマグナスン氏は言う。「存在が知られないまま絶滅してしまう種があるかもしれません」
~転載以上~
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