ナショナルジオグラフィックからです。
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フカヒレに使われるアオザメ、国際取引規制対象に

絶滅が危惧されるサメの保全にとって非常に喜ばしいことと専門家

 

2019.08.27

 

スイス、ジュネーブで開催されているワシントン条約締約国会議で、乱獲されてきたサメの保護を強化する提案が可決された。最後に開かれる総会で、会議を通ったすべての附属書修正案が公式に採用され、最終決定となる。

 

 この提案は、アオザメとバケアオザメをワシントン条約(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の附属書IIに加えるというもの。漁獲によって種の存続が脅かされないと証明しないと、国際取引ができなくなる。これまでアオザメとバケアオザメはワシントン条約によって保護されてこなかった。彼らを絶滅の危機から救うには、今が最後のチャンスだと自然保護活動家たちは言う。(参考記事:「大洋の稲妻 アオザメ」

日本は規制に反対

「アオザメが附属書IIに載ることは、サメの保全にとって非常に喜ばしいことです」と話すのは、天然資源保護協議会で太平洋戦略を率いる、エリザベス・マードック氏だ。「ワシントン条約の下で保護されることは、危機に陥っているアオザメに復活のチャンスをもたらします」

 ワシントン条約に加盟している183カ国のうち50カ国以上が、メキシコによる今回の提案に賛成した。かなり大きな支持を集めた提案である。

 

 それでも自然保護活動家たちは、米国、カナダ、日本など、大きなアオザメ産業を抱える数カ国による反対が、投票の行方を左右することを危惧していた。日本は議論の最中に反対を示し、米国は投票後、反対票を投じたことを表明した。(参考記事:「フカヒレ販売禁止に賛否、サメを守れるのか、米国」

 

 日本の代表は「乱獲ではない」と述べ、附属書IIへの掲載は、ワシントン条約の掲載基準を軽視する「怠慢」を示すものである、と加えた。

 

 過去、米国や他の国は、様々なサメをワシントン条約の附属書に掲載することを支持してきた。しかし、今回は商業的な利害が絡んでいたためにそうはならなかった。「自国の漁業がそれほど影響を受けない種であれば、多くの国が附属書掲載に好意的だ。しかし、自国が責任ある行為を求められた途端、躊躇するようになったのです」と、国際動物福祉基金(International Fund for Animal Welfare、IFAW)で国際的方針についての指揮を執る、マット・コリス氏は語る。

 

危機にひんするアオザメ

 

 種の保全状況を決定する国際自然保護連合(IUCN)は最近、アオザメとバケアオザメが世界的に絶滅の危機にあるとし、さらにアオザメについては深刻な危機にひんしており、このままだと地中海における個体群存続が困難であるとした。3世代、あるいは75年ほどで、50%から79%の減少が予測されているという。(参考記事:「ガラパゴスに全面禁漁区、フカヒレ密漁の増加受け」

 

 泳ぐスピードが速いことから時に「海のチーター」とも呼ばれるアオザメは、主に公海に生息しているため、「どの国の法律によっても規制されていません」と、非営利組織ワイルドライフ・コンサベーション・ソサエティ(Wildlife Conservation Society、WCS)のサメ&エイプログラムのアシスタントディレクター、ルーク・ウォーウィック氏は言う。そのため、「制限なしで、獲れるだけ獲ってしまえ、という状態でした」

 

 アオザメは主に、フカヒレのために狙われる。フカヒレはアジア諸国、特に中国では高級食材であり、結婚披露宴などでゲストへの敬意を表するために振る舞われる。アオザメの肉は酸味があるが、他のサメ肉に比べれば食べられるものであり、フカヒレの副産物として「二束三文で」取引される。そう話すのは、海洋保全団体ブルー・スフィア・ファウンデーションの創設者、ショーン・ハインリッヒ氏だ。(参考記事:「【動画】拿捕の中国船にサメ数千匹、ガラパゴス」

 

アオザメもバケアオザメも危機に直面しており、なおかつ商業的価値が高い種である。保護を強化するか否かという議論は、ワシントン条約そのものについての問いに関わってくる。それは、この条約が野生生物を保護するものなのか、それとも野生生物の取引を保護するものなのか、ということだ。

 

「取引のための条約なのか、保全のための条約なのか。両者の間には、常に緊張があります」と話すのは、IAWFのコリス氏だ。「私たちの回答はいつも、これは保全のための条約だ、というものです。機能としては取引を規制するものですが、目的は国際取引が種の存続を脅かさないようにする、ということです。誰もがこうした見方をしているわけではありませんが」

海の動物に共通の問題

 大西洋まぐろ類保存国際委員会のサメグループによると、将来的な繁殖率を下げる未成熟個体の乱獲と、過去30年におけるメスの成熟個体の自然死の多さを考えると、漁獲が直ちに止んだとしても、北大西洋における個体数の減少は少なくとも2035年まで続く。

 

 今回の提案に対する反論の1つは、アオザメの個体数のデータがないというものだった。しかし、ハインリッヒ氏によれば、これは大海に生息する動物に共通の問題である。

「一体どうやって、海の中の魚をすべて数えればいいのでしょう?」

 

 今後は、附属書IIへの掲載によってアオザメ保護の実効性が高まる、とWCSのウォーウィック氏は話す。

 

「サメも危機に直面する野生生物です。多くのワシントン条約締約国が、附属書IIへの掲載に賛成することでそれを支持してくれました」と同氏は言う。「4億年も前から存続してきた彼らが、今後も生き延びていけるようにしよう、という勢いは、今、明らかに高まってきています」

 

 

~転載以上~

 

 

★関連ニュース

 

毎日新聞

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ハンギョレ

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フカヒレ、私は食べたいとは思いませんが…