こちらの続きです。

 

【動物を幸せに~大牟田動物園の挑戦】(1) 「福祉を伝える」 出勤はモルモット任せ

 

【動物を幸せに~大牟田動物園の挑戦】(2) 環境エンリッチメント(上) 狭くとも選択肢増やす

 

 

西日本新聞からです。

https://www.nishinippon.co.jp/sp/nnp/f_chikugo/article/467297/

 

【動物を幸せに~大牟田動物園の挑戦】(3) 環境エンリッチメント(下) マンドリルに初の砂場

2018年11月21日 14時54分

 

 

マンドリルのガブ(雄、17歳)は、飼育員が砂場に隠した餌のドングリを探すのが得意だ。野生のマンドリルが、熱帯雨林の中で落ち葉をかき分けて餌を探すのと同じ行動。ただ1カ月ほど前には、こんな動作を見ることはできなかった。

 

 大牟田市動物園のマンドリル展示場に「環境エンリッチメント」として木板で囲った砂場が置かれたのは休園日の10月9日。縦1・8メートル、横1・3メートル、高さ0・4メートルと、展示場内の3分の1を占める大きさで、野田理紗さん(21)らサル班の飼育員3人が何度もバケツで砂を運び、1日掛かりで造り上げた。

 

 野生のマンドリルは、コンクリート床で過ごすことはない。「何とか変えたかった」(野田さん)が、床全面に土を入れれば排水溝が詰まってしまう。そこで思い付いたのが砂場だった。トウネズミモチ、イヌビワといったマンドリルが好きな葉が付いた木の枝を土に刺す工夫も凝らした。

 

 他の動物園で生まれたガブがコンクリート床以外で過ごすのは初の経験。初日は砂場の外から葉を食べるだけだったが、次第に慣れていった。大牟田生まれのルル(雌、1歳)も砂場の枝に跳び乗って遊ぶように。それまでも中古の消防ホースを編んだ遊び道具をつるしたり、餌を竹筒に入れて与えたりと、さまざまな環境エンリッチメントに取り組んできた野田さん。「砂場でも今までになかった行動をするようになった」と手応えを口にする。

 

 飼育員考案の環境エンリッチメントのアイデアは163種(10月末現在)。各アイデアを別の動物でも試せるように、作製手順や管理法などを記録したファイルが常備され、園内の詰め所で飼育員の誰もが閲覧して共有できる。効果や課題を話し合うミーティングも行われている。

 

 環境エンリッチメントは、集客にも大いに生かしている。

 

 ライオンなどの猛獣に肉の塊を与えるイベントでは、獣舎内の木の上といった高い位置に肉を隠し、猛獣が鼻を利かして探し出し、ジャンプして食いつく迫力ある姿を見ることができ、入園者の人気だ。ただ、決してショー目的ではない。

 

猛獣も野生では餌を見つけるのは難しい。その環境に少しでも近づけるため、隠して猛獣の採食時間を延ばし、狭い獣舎の中での運動不足を補い、木登りで爪のケアも施すといった効果を狙っている。

 

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 大牟田市動物園(同市昭和町)が全国の注目を集めている。「動物福祉を伝える動物園」として高い評価を受け、入場者数増にもつなげている。飼育動物の「幸せ」のために、公設民営の小さな動物園が始めている取り組みを紹介する。