こちらの続きです。

 

【動物を幸せに~大牟田動物園の挑戦】(1) 「福祉を伝える」 出勤はモルモット任せ

 

 

西日本新聞からです。

https://www.nishinippon.co.jp/nnp/f_chikugo/article/467298/

 

【動物を幸せに~大牟田動物園の挑戦】(2) 環境エンリッチメント(上) 狭くとも選択肢増やす

2018年11月21日 14時54分

 

獣舎内に作られたロフトでくつろぐツキノワグマのツッキー(大牟田市動物園提供)

 

 

「皆さん、世界には何種類のクマがいると思いますか」。4日、大牟田市動物園のツキノワグマのツッキー(雌、16歳以上)の獣舎前であった「ちょこっとガイド」。クマに興味を持ってもらおうと、飼育員の江崎美貴子さん(33)はパネルを使って入園者たちに呼び掛けた。体長1メートルほどのツッキーは黒い体を丸っこくかがめ、獣舎の中を行ったり来たりしている。

 

 鉄柵に囲まれた獣舎の展示場は7平方メートル、奥のコンクリートの寝室は6平方メートル。62年前の設置時のままで、決して広くはない。野生のクマの行動を考えれば広い獣舎がいいが、予算の制約があるため、そのまま使われている。

 

 そこで「動物福祉」を掲げる動物園が実践しているのが「環境エンリッチメント(充実)」と呼ばれる取り組みだ。動物本来の行動ができる環境をつくり、生活の質を高めるもので、動物福祉への具体的な手段ともいえる。

 

 ツッキーを担当して9年目の江崎さんがこれまで取り組んだ環境エンリッチメントは多岐にわたる。

 

 まずは運動不足解消に向け、展示場内の高さ3メートルの上部空間を使おうと丸太で床から2メートルほどの位置にロフトを設けたほか、木登りのために丸太を垂直に立てて、動ける範囲を広げた。さらに展示場と寝室を隔てる扉も、江崎さんの入室時以外は常時開放した。

 

ツッキーは、暑ければ日の当たらない寝室に入ったり、風通しの良いロフト部分に上ったり。運動量が増え、中性脂肪の値が改善する効果が出た。展示場と寝室の常時開放は、ツッキーが「人に見られたくない」と思う時、寝室がシェルターの役割を果たすようにもなった。

 

 餌やりも工夫する。野生のクマは嗅覚で餌を探すため、1日2回の食事の際は毎回、下からは直接見えない丸太の上に置いたり、落ち葉で隠したりして給餌の時間を長くし、頭や体を使う機会を増やした。また、季節に合わせて野菜や果物の種類を変えることで、ツッキーが飽きないように配慮する。

 

 環境エンリッチメントの取り組みが多いか少ないかは、狭い空間で一生を過ごす動物にとって、幸せに暮らせるかどうかの大きな違いになる。

 

 ツッキーが展示場で動いていれば「何をしているんだろう」と入園者が興味を抱く。入園者の見学時間が長くなる効果も生まれた。

   ◇     ◇

 

 大牟田市動物園(同市昭和町)が全国の注目を集めている。「動物福祉を伝える動物園」として高い評価を受け、入場者数増にもつなげている。飼育動物の「幸せ」のために、公設民営の小さな動物園が始めている取り組みを紹介する。