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度重なる無許可飼育に行政指導。動物愛護法違反で初公判が行われた移動動物園業者の実態

10/12(金) 8:40配信

 

度重なる無許可飼育に行政指導。動物愛護法違反で初公判が行われた移動動物園業者の実態

《流血で話題になったライオンはどこかへ譲渡》ライオンの狭い檻。壁や顔には血が……。写真はネットで公表され炎上

 

「動物に触れる」のは子供たちにとって大きな喜びだろう。しかし、それすら「動物のストレスになる」と問い直される時代に、それ以前の“不適正飼育”をしている動物園が数多いという。

⇒【画像】ピエリ守山で現在も営業する「めっちゃさわれる動物園」の内部

◆ショッピングモールで移動動物園開催 衛生面は大丈夫か?

 琵琶湖にほど近い大型商業施設「ピエリ守山」(滋賀県守山市)にある「めっちゃさわれる動物園」。レストランなどの真下でアミメニシキヘビやカナダヤマネコ、ニューギニアワニなど、約100種類の動物たちに「触れる」スポットだ。

 運営する堀井動物園(守山市)は移動動物園(動物を移送して臨時の動物展示を行う運営形態)を看板とする業者。’82年創業の老舗だ。滋賀県知事の許可を得て「第一種動物取扱業」として登録している。一部では有名な業者だと言っていい。法令違反やボヤ騒ぎ、動物を逃がすなど、お騒がせ事例に事欠かないからだ。

 園長の堀井嘉智氏は今年3月、大津地方検察庁に書類送検された。特定動物(人に危害を加える恐れのある危険な動物)であるハクトウワシとアビシニアコロブス(オナガザル科の霊長類)の無許可飼育(動物愛護管理法違反)が’15年9月に発覚。動物保護団体「PEACE」は’17年に滋賀県に情報公開請求を行い、この事実を知る。守山警察署に見逃されていることを指摘したものの、守山警察署の腰は重かった。

「捜査がまったく行われていなかったので、公安委員会に苦情申し立てを文書で行いました」(「PEACE」の東さちこ代表)

 これが書類送検、起訴に結びついた。同団体は検察にも嘆願書を送付。現在は刑事裁判が進行中。年内にも一審の判決が出る見通しだ。

「堀井氏が動物たちにしていることは『ネグレクト』(適切な飼育を怠り、放棄すること)。虐待の一種と言えます」(同)

「飼い殺し」動物園の実態はどのようなものなのか。駅から5分ほど歩くと、住宅街の一角に堀井動物園の飼育場があった。

◆糞尿などの悪臭には近所の人々も辟易

「飼育場」とは言っても、外見は完全に「倉庫」。入り口の柵の隙間から暗がりに押し込められた動物たちの姿が垣間見られた。飼育員らしい人影は見当たらない。

 無許可飼育をしていたアビシニアコロブスは堀井動物園に移ると同時に死亡。身体が強靭で長生き、寒冷に強いとされるハクトウワシも昨年12月に死んだ。死亡原因は特定できないものの、飼育環境が影響している可能性は否めない。女性スタッフに、進行中の裁判について尋ねてみた。

「ここには担当の者がおりませんので、対応はできません」

 車で5分ほど離れた堀井動物園の第2飼育場。タクシーの運転手が「臭いがすごいね」と苦笑するほど、地元では悪臭で有名。糞尿が雨で流れ、住民から苦情も殺到。また、昨年8月には非公開の敷地内にムフロン(ヒツジの一種)の頭蓋骨が捨てられていた。

 発見者が警察に通報したが、「敷地内だから問題ない」で処理されていた。

 大津地方裁判所で行われた第1回公判。被告である堀井氏と弁護人は犯行事実を認めたものの、公訴棄却を求めて争う戦術に出た。

「動物愛護法違反で裁判なんて、これまで誰も起こされてはいない。起訴猶予相当だ」と訴えるばかりか、検察側の公訴権濫用とまで主張した。

 業界関係者が苦笑交じりに言う。

「有罪となれば、業者の登録は抹消。この仕事をしている人間ならそんなことは先刻承知です」

 所管の滋賀県動物保護センターは「これまでも法令に基づき対応してきました。裁判の事案は警察が動いていることなので、特に言うことはありません」。他人事のような行政の監督も、問題を放置してきた面があるかもしれない。

 昨年12月には「めっちゃ」が入るピエリ守山を管理するデベロッパー「サムティ」(大阪市淀川区)が契約を更新せず、立ち退きを迫ったとの報道が流れた。サムティに事実を確認すると、「相手のあることなので、何とも申し上げられません」と否定しなかった。

 動物の虐待・遺棄に詳しい細川敦史弁護士が解説する。

「特定動物の不許可飼育は許されません。過去に起きた問題で立件されていないものがある。それで、現在の状況になっていると想像されます。動物愛護法改正で業者への規制を強め、殺傷・虐待の法定刑を上げる。この2つの柱で対応する必要があるでしょう」

 動物愛護法改正への議論はこの秋の臨時国会から始まる。

― 虐待動物園の実態 ―