読売新聞からです。

http://www.yomiuri.co.jp/world/20150418-OYT1T50029.html



ゾウがサーカスからいなくなる?「虐待」批判で


2015年04月19日 10時39分




サーカスで芸を披露する象たち(8日、バージニア州フェアファクスで)






米国で親しまれてきたサーカスの動物ショーが、「虐待」との批判を受けて姿を消しつつある。


 インターネットなどを利用して主張を展開する動物愛護団体の強力なメディア戦略が、批判的な世論をつくり出している。

 

◆目玉の「ゾウ」


 軽快な音楽が流れる中、ステージ上でアジアゾウが別のゾウの背中に前足を乗せてポーズをとると、4000人を超える観衆から一斉に拍手がわき起こった。首都ワシントンに近い東部バージニア州フェアファクスで、8日に行われた「リングリングサーカス」のハイライトシーンだ。ゼバ・テイラーちゃん(8)の目は、ゾウの演技にくぎ付けになった。母親のノエラさん(40)は満足そうな娘を見ながら、「ゾウがサーカスからいなくなるなんて、悲しいですね」とため息をついた。


 サーカス巡業で長い歴史を持つリングリングサーカスは3月、3年後をメドに目玉のゾウのショーを廃止すると発表。ゾウはフロリダ州の屋外保護施設で管理するという。


 ◆動画で告発


 廃止を決めた最大の理由は、米の動物愛護団体「PETA」による「ゾウ虐待批判キャンペーン」に自治体が反応し、巡業に支障をきたす恐れが出たためだ。背景には、急速に普及したインターネットやソーシャルメディアの存在がある。


 PETAは30年以上にわたり、調教師がしつけのため棒でゾウの体をたたく行為を「虐待」と指摘し、棒の使用禁止を訴えてきたが、世論の反応は鈍かった。ところが近年、ゾウをたたく場面を編集した動画をネット上に掲載し、ツイッターなどソーシャルメディアで拡散させると、市民の関心を一気に集めた。

 大学1年のズリ・ガンニョンさん(19)は8日、サーカス会場前でショー反対のプラカードを掲げた。「ネットで動画を見て関心を持ち、初めて抗議に参加した」と言う。


 PETAはスマートフォンの「専用アプリ」も開発。ゾウの「虐待」場面を撮影し、ワンタッチで自治体などに送って告発できるしくみで、告発する度にポイントがたまるゲーム感覚が若者に受けているようだ。


 PETAは自治体にも接触し、持論を展開。これを受けてロサンゼルス市は昨年、調教用の棒の使用禁止を法制化した。PETAによると、他にも30前後の自治体で使用禁止を検討する動きが出ているという。


 PETA副理事のブリタニー・ピート氏(35)は、「30年前と環境が大きく変わった。ネットやソーシャルメディアが流れを作り、我々の考えが主流になった」と自信を強める。


 ウィリアム・アンド・メアリー大学のバーバラ・キング教授(人類学)は「動物の動画や写真は感情移入しやすい。ネットなどで広がると思いが共有されているという実感がわき、社会全体の変化につながる」と分析する。