娘の一言にほんまは泣きそうになった。
何度も言うけど、普段そんなこと言えるタイプじゃないこと知ってるから。
でも今日は何があってもオンナの前で涙をみせることだけはしまいと心に決めてきた。
あくまで妻という正当なスタンスから話をする以上、たとえ
翻弄され泣き笑いしてる昨今が事実で、それを既に知られていたとしても、元凶である当の本人の前でわざわざ見せて憐れみを買うなんてのはプライドが許さん。
それがたとえ首輪つける為の演技だとしても、ここは違う、後々絶対後悔するとおもったから必死に堪えてた。
『はい。約束します。』
素直に頷いたA菜に対して凛として頷いただけのヒメが誇らしかった。
だからかな
最終目標をすんなり言えた。
『それじゃ、
今のことを紙面に残してくれる?それをお護り代わりに持っておきたいから。勿論誰にも見せない。これはあくまで私の気持ちの問題やから。
お願いしてもいい?』
少し間があって、カバンからノートとボールペンを取り出し
さらさらと書き始めた。
〇〇さんとは会社以外では会いません。〇〇さんが参加してる飲み会には行きません。
2019 08 29
〇〇A菜
『これでいいでしょうか?』
『ありがとう。
これでこれからゆっくり眠れるわ。』
まる文字で
書かれた短い文章。
確認してバックにしまった。
終わった。
気持ちも確認したし、釘も刺した。連絡先も交換したし、会わないと誓約した紙面も残した。
全て言質もとれてるはずやし。
今やれることはやったはず。
これで約束違えたらどうなるかガキでも既婚者なら少しは想像つくはず。
しかもこれが初めてじゃないのなら。
そんな激甘なことを考えて
その時はそれで別れた。
店出たら外は真っ暗だった。
やりきった感で力抜けて
どの道でどう帰ったかあんま覚えてない。
でもペダルを踏む足取りは軽快でお月さんが綺麗だったのだけは覚えてる。
信号待ちで携帯を見ると、21時前、奴から何度も着信が入ってる。かけ直そうとしたその時、またすぐ着信が鳴った。
思わず娘と顔を合わせ電話をとる。
出た瞬間受話の向こうから烈火のごとくブチ切れた怒号が飛んできた。