1949年以降の日本のエホバの証人の伝道者数推移のグラフを載せました。

 

同時に、日本と全世界の伝道者数推移の傾向の類似性、いえ、日本の伝道者数の推移が、特に、どうも欧米先進国の伝道者数推移とかなり似通っていることを指摘します。(ただし、結論するにはここにあげたグラフだけでは不十分ですが。)

 

最後にウォーラー・ステインの『世界システム論』的な観点から、「エホバの証人の宗教運動」を簡単に論じました。またその限界を超える視点として、参考HPなどの情報を載せました。

 

ま、こまい話は別にして、はじめのグラフ(初出)だけでも眺めて見て下さい。

 

もくじ(グラフ)

1.平均伝道者数と増加率(日本)1949年~2023年

 ・(再掲)全世界の伝道者数(1960年~2023年)

2.両グラフの共通点・相違点

3.西欧・中西欧だけを見る

 ・(再掲)全世界の伝道者増加数-6地帯ごと5年ごと(1991年~2021年)

 ・(再掲)全世界の伝道者数-6地帯ごと5年ごと(1991年~2021年)

4.議論-世界システム論からJWという宗教運動を論じる

5.まとめ

6.参考HP、番組、本など

 

 

では、どうぞ。

 

・・・・・・

 

あれ?

これ、出したこと、なかったよね?

1949年~2023年の、平均伝道者数(日本)の推移。

 

1.平均伝道者数と増加率(日本)1949年~2023年

 

青線:平均伝道者数

橙線:平均伝道者の増加率

 

戦後伝道者数のはじまりは1949年の9人1998年が最高で222,347人その後漸減コロナ以降に伝道者数の定義変更で若干戻っていますが内容スカスカの数字です。

 

伝道者・伝道者増加率に基づく区分は緑の縦線で、日本経済に基づく区分は縦の赤線で入れており、両者のタイムラグ(すなわち5年、8年)も図中に入れている盛りだくさん?のグラフです。(← 見ずれーよ!)

 

でも、このグラフを下の全世界の伝道者数1960年~2023年)と比べてみてください。傾向が結構似てますよね。

 

 

 

2.両グラフの共通点・相違点

1970年ぐらいまでの増加はだらだら

75年予言問題の影響は日本でも全世界でもほぼ同様に見られる。

80年頃から98年頃までは双方、安定的に増加

・ただし2000年以降は日本が停滞・漸減しているのに対して、世界は比較的ゆっくりとは言え、着実に増加

 

 

3.西欧・中西欧だけを見る

必要なグラフをちゃんと作ってないので、90年以降のみで論じる。

以前に出した、下のグラフ(6地帯ごと5年ごと伝道者増加数)を見て下さい。

 

 

世界全体では2000年以降もずうっとそこそこ増加しているかのように感じるかもしれないけど、増加のペースは落ちている。(コロナのアフリカ大陸JWに対する影響がすごく大きかったようだ)

 

一方、西欧だけ、あるいは中東欧をあわせて欧州全体で見ても、日本と傾向が似ている。西欧(一番下の濃いめの緑)や中東欧(下から二番目の薄緑)を見てみると、96年頃まで、あるいは(東西冷戦終結のあおりで)新世紀初め頃までは比較的順調に増加してたが、2001年以降は増加のペースがかなり落ちた。

 

ただし、それでも日本と違って西欧では減少が確実になっていない。それはおそらくEUへの移民や難民のせいだろう。

 

ドイツでは外国人会衆が増えているとかいう記述をreddit/exJWだったかどこかで読んだことがあるし、また政治的にもEU各国では外国人排除の極右政党が強まってるとかいう話があった。

 

北米も欧州と似たり寄ったり。ただし以前に紹介したけどピュー・リサーチのデータを分析すると、白人層のJWは減少、ラティーノ(ヒスパニック)・黒人層(移民が多いのか?)のJWでは、白人JWの減少を如実に超えて着実に増加している。

 

米国のことをボクたちは白人の先進国と思いがちかもしれないけども、確かにそういう一面はまだ今でもあるものの、昨今ではむしろ国内に中南米やサブサハラを併せ持つ、先進国国民と発展途上国国民のサラダ・ボールみたいな国になったと言えるのではないか。

 

この見方は、カート・アンダーセンが著書『ファンタジーランド 狂気と幻想のアメリカ500年史』の中で、アメリカのこの60年間ほどの人種構成の変化を「1960年にはアメリカ人の90%は白人で非ヒスパニック系だった。白人の人口が70%以下の州はミシシッピ、サウスカロライナ、ルイジアナ、アラバマだけだ。だが現在では、アメリカ全土で白人が占める割合は60%にまで下がった。つまりアメリカの人種構成は1960年代の南部諸州よりもさらに「南部的」になった」(下巻p259、東洋経済 2019年)と述べていることとも合致するだろう。(→ 今年の大統領選は、トランプが勝つね。たぶん。)

 

これも上と同じで、以前に出したグラフだけど(地域ごとの伝道者数)、参考までに載せておく。

 

 

西欧・中欧が96年頃から停滞しているのが分かるだろう。北米(米国)では伝道者数がゆっくりとは言え着実に伸びているが、先に述べたように白人層は減少しているはずだ。

 

 

4.議論 ー 世界システム論からJWという宗教運動を論じる

以前にも同じ話を書いたような気がしますが、

 

北米・中西欧と日本の伝道者数の推移傾向がほぼ似ているのは何故なのか?

 

それはたぶん、上記の国々、すなわち「西側先進国」の社会の在り方が、国々で多少の違いはあるものの、ほぼ同じだから。で、だからこそ、同じような時期に同じようなことが各国の国内で起きてくる。

 

ちなみにウォーラー・ステインの『世界システム論』的に考えれば、米国・中西欧・日本といった国々は(工業製品を輸出する)「中核」、東欧は(農産物と労働力を供給する)「半周辺」、アフリカ・中南米は(資源と市場を提供する)「周辺」と分類してよいだろう。

 

「エホバの証人」という宗教運動は、「中核」の覇権国家・米国で発生し、すぐに他の「中核」の国々に伝染し、やがて「半周辺」「周辺」の国々へも広がっていったが、現在では「中核」「半周辺」の国々ではJWは停滞・衰退を始めている。「周辺」諸国ではまだ増加は続いているものの、その増加量は減衰している。

 

そんなふうに論じられるだろうか。

 

 

5.まとめ

日本の伝道者数推移の傾向は、全世界(特に欧米諸国)の推移傾向と類似している。

それはウォーラー・ステインの『世界システム論』的に考えると理解しやすい。

JWは、日本を含んだ欧米先進国(『中核』の国々)では衰退を始めており、中南米・アフリカ諸国(『周辺』の国々)ではまだ増加が続いているものの、その勢いは弱くなってきている。

 

なお、『世界システム論』には「欧米中心的世界観」だという批判があるそうだが、それを相殺するためには「アジアから見た世界観」も大事になってくるだろう。それは参考HPや番組であげた。お時間があれば、どうぞ。

 

 

6.参考HP、番組、本など

・HP: 人事のアカデミア世界史 未来を考える材料として歴史の見方を身につける
(山下範久 立命館大学グローバル教養学部教授へのインタビュー記事)

 

 

・番組: NHK『3か月でマスターする世界史』

JWを考えるうえでは、特に第10回「グローバル化とヨーロッパの覇権」以降が直接的な関係があるかな。

 

 

・ 同番組のテキスト。執筆の一人に上記HPの山下範久氏。

 

 

・ この記事内で、一部引用した。

 

NHK番組『世界サブカルチャー史 欲望の系譜』の関連図書です。

米国の内部事情を知ると、ちょっと怖くなります。と同時に、世界でも類似の事態が多かれ少なかれ進んでいるような気がします。一瞬、JWってかわいいぐらい、という感想を持ちました。気が向いたらどうぞ。

 

(記事の終わり)