日本の「実質経済成長率」とその約5年半後のエホバの証人(日本)の「平均伝道者増加率」との間に「強い相関関係」があることをデータから示します。
また、エホバの証人の宣教手法は『大衆消費社会』の”成立期”に適合したものであって、『大衆消費社会』が爛熟してくるとその宣教手法は社会に対して不適合なものとなり組織の成長は減速・停滞し、やがて衰退していくことを指摘しました。
・・・・・
この記事、はじめに書き終えた時には、
実は1万字を超える大作になってしまったので、
たくさん削除して、何とか5千字あまりにできました。
記事の前に、お約束(?)の写真を一枚。
え? 統計ブログなんてやめて、北海道の写真ブログにしろって?
うんうん。そっちの方が面白いかも。(笑)
写真は5月中旬の夕焼けのフゴッペ浜だったかな。
プロの写真家ならもっと素敵な写真になるだろうに、そこは残念だな~。
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いちおう目次を。
1. 日本の「実質経済成長率」 推移(日本)1955年~2022年
2. エホバの証人の伝道者増加率(日本)1955年~2023年
【戦後日本のエホバの証人の時代区分】
【グラフ分析】
3.「伝道者増加率」と「実質経済成長率」の推移(改)(6年度分の時差付け)
4.「伝道者増加率」と「実質経済成長率」の相関散布図(改)(6年度の時差つけ)
5.「伝道者増加率」と「実質経済成長率」の相関散布図(時代毎)(6年度時差)
(議論)
(まとめ)
(データ元)
(参考図書)
いや、これ、長くないか?
実際、あれこれ書いてたら、
ま、グラフだけでも、さっと見てみて。
では、どうぞ。
![](https://ssl-stat.amebame.com/pub/content/9477400408/amebapick/item/picktag_autoAd_302.jpg)
1.日本の「実質経済成長率」推移 1955年~2022年
この戦後日本の「実質経済成長率」に基づく時代区分とネーミングは勿論、ボクのオリジナルではなくて、以前紹介した浜日出夫(2023)『戦後日本社会論』(※1)の本p.7のこれとほぼ同じグラフに基づいている。
こうやって戦後日本の経済及び社会を3期に分けると、分かりやすいですよね。
で、これを見た瞬間、思ったことが。。。
あ、日本のJWの成長とおんなじパターンじゃん、ってこと。
で、具体的に確認したくなった。
2.エホバの証人の伝道者増加率(日本)1955年~2023年
エホバの証人(日本)の戦後の「伝道者増加率」の推移(1955年~2023年)を示したグラフ。
これも先の浜のグラフにおおよそ沿って3期に分けた。
ただし、区分けした年代は浜のグラフとは数年の違いがある。
またここでは各期を(なんとなく)前後で分けていることもある。
どう?
ま、いいんじゃね?
最初に出した浜日出夫(2023)(※1)は戦後日本社会と家族のあり方を様々なデータや事象を駆使しながら通史的に論じているが、「低成長期」に関連しては「第2の近代化」という呼称を使っている。
山口瑞穂(2022)の『近現代日本とエホバの証人』(※2)は日本のエホバの証人の歴史を通史的に扱っており、そこでは「灯台社」の時代を含めて4期、戦後のみについて言えば3期に分けて論じているが、その区分け年は、ここで私が挙げたものとは若干の違いはあるものの、ほぼ同じと言ってよいでしょう。
宮台真司(2008)は『14歳からの社会学』(※3)において戦後日本社会を「近代過渡期」と「近代成熟期」に分けて論じている。
それらと、ここで私が示した戦後日本のエホバの証人の時代区分について、箇条書きでまとめる。
【戦後日本のエホバの証人の時代区分】
① 1955~1978年 『戦後拡大期+75年予言期』(増加率平均:22.3%)
~ 経済的には浜(2023)の『高度成長期』
~ 宮台(2008)の「近代過渡期」
~ 山口(2022)の第3章「不確定の時代」
② 1979年~1998年 『安定成長期』(増加率平均:8.5%)
~ 経済的には浜(2023)の『安定成長期』
~ 宮台(2008)の「近代成熟期」
~ 山口(2022)の第4章「柔順の時代」
③ 1999年以降 『停滞漸減期』(増加率平均:-0.1%)
~ 浜(2023)の(経済的)『低成長期』、かつ「第2の近代社会」
~ 宮台(2008)、引き続き「近代成熟期」
~ 山口(2022)の第5章「忍従の時代」
ということになろうか。
山口の記述を基にしながら、浜や宮台の示す戦後各時代の様相を読めば、エホバの証人(日本)がどのような時代状況の下でどのように成長してきたかが分かるだろう。
私が一点だけ書くと、②の時期の1985年6月6日に起きた「大ちゃん事件」が日本社会と日本のJWに非常に大きな影響を残したことが、グラフからもよくわかると思う。伝道者増加率がその事件の前では平均12.0%であったのが、事件後は約半減して平均6.2%へと落ち込んでいる。
【グラフ分析】
さて、上の二つのグラフを比べて見れば、「実質経済成長率」と「伝道者増加率」の間に相関関係がありそうに思われる。
試し両者の相関係数を計算してみると、出てきた値が、
0.637。
なかなかいい相関だ!
ところで、「経済変動」と「伝道者増加率」に因果関係があるとしても、「経済変動」の「伝道者増加率」へ影響には数年のタイムラグがあるはずだ。
具体的に、何年のタイムラグがあるのか?
「経済成長率」に変動があった時の何年後に「伝道者増加率」に影響があるのか、それを調べたい。
図示するとこんな感じ。
「経済成長率」→(何年度後?)→「伝道者増加率」
で、計算すると、
(同年度)0.637
(1年度後)0.671
(2年度後)0.740
(3年度後)0.761
(4年度後)0.774
(5年度後)0.808
(6年度後)0.820
(7年度後)0.807
(8年度後)0.784
「経済成長率」と「伝道者増加率」のタイムラグを一年一年大きくすると、徐々に相関がよくなってゆき、6年度後が一番相関が強い0.820となり、その後ふたたび相関がゆるくなってくる。
6年度後というのは、暦年で言えば5年5か月後(約5年半後のことだ)。
「経済年度」が同年4月から次年3月、「エホバ年度」が前年9月から同年8月だから。
ちなみに、相関係数の目安をネット検索すると
0.4~0.7:かなり相関関係がある
0.7~1.0:強い相関関係がある
ということなので、0.82は「強い相関関係がある」と言える。
これ、なかなか、いいんじゃないか?
オモシロイ。
で、6年度分のタイムラグを設定して、上の二つのグラフを重ねてみると、
3.「伝道者増加率」と「実質経済成長率」の推移(改)(6年度分の時差付け)
まぁ、イイ感じじゃない?
特に大きな問題もなさそう。
こまい議論は、やめておく(ここはまだスタート地点)。
ここまでの結論をざっくりまとめると、
日本経済とエホバの証人に関して、次のことが言えるだろう。
「実質経済成長率」と
その約5年半後の「伝道者増加率」との間には、
「強い相関関係」がある!
なお、この結果は、2023年年末に書いた下の模式図、「産業構造の変化」が「社会の変化」を生み、「社会の変化」が「宗教の変動を生む」ということと整合的な結果だ。ま、この図も社会科学で古くから言われている「下部構造が上部構造を規定する」(マルクス史的唯物論)ということをざっくり表現しているだけだけど。
話はそれて申し訳ないが、ネット社会ではかなりの「偏見」と「結論の飛躍」がまかりとおりがちだから、私自身について誤解のないために書いておきたい。
例えば今回のように、私が「マルクス」の著作に言及するとしても、言うまでもなく、それは私がどこかの共産党員であることを示さないし、また全世界共産革命を目指しているわけでもないし、まして中国共産党のスパイであるわけでもない。またもちろんネトウ的人間ではないし、Qアノンの信奉者でもない。まして米国「第二のCIA」と称せられるNED(全米民主主義基金)のエージェントでもない。
じゃあ、あんた、何?って言われれば、そう。。。単なる田舎の土建会社の土木技術者だよね。まぁ、某カルトの元1世信者だったので、それに伴う言葉にできないいろんな悲しみを抱えながら生きてはいるけどさ(まぁ、二世の苦しみ程ではないと思うけどさ)。
いや、すまん。
思いのほか長くなった。
話を戻そう。
次、相関係数の散布図。
4.「伝道者増加率」と「実質経済成長率」の相関散布図(6年度の時差つけ)
「実質経済成長率」と「平均伝道者増加率」(6年度後)の組の相関係数を散布図に取った。
これもなかなか、イイ感じ。
かなり気持ちいい。
ただ、ここまで来ると、ちょっと欲が出てくるんですよね。
この最後のグラフ、
先に三つに分けた時代ごとに色分けしたら、
どうなるの?
つまり、
① 1955~1978年 『戦後拡大期+75年予言期』(増加率平均:22.3%)
② 1979年~1998年 『安定成長期』(増加率平均:8.5%)
③ 1999年以降 『停滞漸減期』(増加率平均:-0.1%)
の三つで色分けすると、
なんか特徴、出るかな?
ただし②『安定成長期』は前期(79~86年)と後期(87年~98年)に分けた。
で、やってみた。
5.「伝道者増加率」と「実質経済成長率」の相関散布図(時代毎)(6年度時差)
ふぅ~。
なかなかいいじゃないか。
なによりまず、美しい。(→ あなたほどじゃないけどね、なんて書いてもみる。)
時代を経るにしたがって、「経済成長率」と共にエホバの証人の「増加率が」下がってきていることが一見して分かる。
(議論)
細かい議論は省くとしても、他に気が付くことと言えば、
・「赤」の時代の分散が他より大きい。
→ この時代に関しては、6年度のタイムラグにも問題ありか?
→ 「戦後復興期」と「75年予言期」を一括りにしたこと自体が問題か?
・「赤」と「橙」の分布の重心は近似直線の上側、「緑」と「青」の分布の重心は金地直線の下側にある。
→ 「大ちゃん事件」により、エホバの証人に対する日本社会の警戒感が強まったと言えそう。
・各時代内だけでの分布を見れば、「経済成長率」と「伝道者増加率」の間には、むしろ相関がなさそうな印象を受ける。
→ ちゃんと調べる必要がある。
で、この一週間ぐらい、このグラフについて考えてたんだけどね、
今の私の仮説は、
・「経済成長率」と「伝道者増加率」との関係は、(偽相関であって)因果関係ではない。
じゃ、なぜ「経済成長率」と「伝道者増加率」の両者に相関が出てくるのか?
それを一言で言えば、ナニ言っとんじゃ?ということになるけど、
・エホバの証人の宣教手法は、『大衆消費社会』の”成立期”に最適化したものであり、『大衆消費社会』が変化してくるにつれてその宣教手法が社会に適合したものではなくなってきた、的な答えになるんじゃないか。
これを論じるには、まず『大衆消費社会』とはナニ?(※4)というところはじめて、日本におけるその進展に伴なう「経済成長率」と「社会」の変化を論じて、うんぬんかんぬん・・・
また何より、19C末から20C初頭の米国におけるエホバの証人の発生と確立は、ちょうど米国での『大衆消費社会』の登場と軌を一にしているので、そこをちゃんと論じないといけない。
それから世界各国における『大衆消費社会』の現状とエホバの証人の「伝道者増加率」について、調べて論じる必要がありましょう。
個人的には、上手くいきそうな気がしますが・・・
これ、結構な作業量。
ダレがするん・・・?
(まとめ)
・日本の「実質経済成長率」とその約5年半後の「JW伝道者増加率」との間に「強い相関関係」があることがわかった。
・その原因は、おそらくエホバの証人の宣教手法が『大衆消費社会』の”成立期”に適合したものであり、日本における『大衆消費社会』が成立・変化してくるにつれて、エホバの証人の宣教手法は社会に適合しないものとなり、その「伝道者増加率」は徐々に低下してきたのではないか。
・・・・・・
ナニゆうとんじゃ?の世界かもしれませんが、
まあ、一言で言ってしまえば、
「今後、JWは衰退あるのみ」ということでよいかと思います。
だって、井伏鱒二も漢詩を翻訳して、
こう歌っているじゃないか。
コノサカヅキヲ受ケテクレ
ドウゾナミナミツガシテオクレ
ハナニアラシノタトヘモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ
あぁ、酒でも飲もう。
この一週間で八重桜が強風に花びらを散らしてしまった。
(小樽、手宮公園5月中旬、夕刻)
ふぅ。長かった。
申し訳ない。
ここまでありがとう!
![](https://ssl-stat.amebame.com/pub/content/9477400408/amebapick/item/picktag_autoAd_302.jpg)
(データ元)
1.エホバの証人(日本)の「宣教結果の元データ」は、エホバの証人が発行している「年鑑」や「奉仕年度の報告」から。ただしhttps://avoidjw.org/にあったまとめデータ(← さっき確認したらアレ?なんかアクセスできなくなってる)や、https://wtsarchive.com/pubsから過去の年鑑pdfを利用しました。
2.日本の「実質経済成長率」は、(計数の基準が時々変わったりとかで)実は長期のものがない!ということなので(← 知らんかったよ)、内閣府のこちらのページからちゃんと取りましたよ。
でも、いろんなデータをどうつないだらいいんだ?的なところはあったので、そこはそう、「長いものに捲かれろ!」ということで『社会実績データ図録』のグラフと注意書きをよく見ながらマネして作りましたよ。
え?じゃあ、はじめからそれ使えばいいじゃん!って??
いや、それを言わないでよ。(涙)
(参考図書)
(※1)浜日出夫(2023)『戦後日本社会論』
(※2)山口瑞穂(2021)『近現代日本とエホバの証人』
(※3)宮台真司(2008)『14歳からの社会学』
(※4)『大衆消費社会』ってナニ?
(記事の終わり)