叔母が最期を看取りたいとの事で、うちからは遠方の医院へと移ったのだが移ってからバタバタと体調が悪くなり2週間程で亡くなったのだった。
葬儀その他もひと段落ついたので両親が遠方のその医院へお礼と挨拶を兼ねて出向いて行った。
その晩、帰宅した両親と共に叔母も車から降りて来た。妙にニコニコしており何事か?と思っていたら叔母の後から亡くなったはずの祖母も降りて来た。
『幽霊なう』
見えているのは自分だけか?いや、皆に見えている。触れている。
元気な頃の祖母のままだった。
色々あったけど良かった良かったと叔母は言う。
写メは取れるのか?と思いスマホで写してみる。
う つ っ た
写メに確かに祖母が写っている。しかし、しばらく見ていると画像はグズグズと歪みはじめ顔色の悪い叔母に変わっていった。
驚いていると妹が来てこの現象について調べたと言う。
どうも死人が生き返ったのではなく、我々生きている人間があの世の狭間に落ちている状態らしい‼︎
今この状態で、常識的な葬儀の段取りを行い続ける事は、この世界に魂を定着させる事になるから絶対にしてはいけないというのだ。
そう言えば仏間で父が仏壇に納めるお札?に名前を書くと言っていた。
常識的な行動をしてはいけない?
なら、名前をお札に書く行為も行ってはならないではないか。
急ぎ仏間に行き止めるが、もう書いてしまった後だった。
その時、携帯がなった。職場の同僚からだった。
『もしかして、ヤバイのが来てるんじゃないですか?』
わかるのかい?
『とても悪い気がして・・いや、来てるんじゃなくて落ちてるんですね?』
あ、こんな能力のある子だったんだ。
『常識的な行動は決して取らないでくださいよ』
と仏間をうろうろしながら、こんなやり取りをしていると私の後を小鳥が付いて回っている。
ウワァァァァァァァ‼︎
『どうしました⁈』
小鳥を驚かせてやった。
小鳥はコロンと転げると、そのままマツボックリになった。
『何かわかったらまた電話しますね』
そう言って電話は切れた。
仏間では、父が非常識に祭壇の上であぐらをかいていた。
居間から祖母が何か飾りのような物を持ってやって来た。
仏壇ニこれヲ、カザラナイト
それは俺がやるから貸して。
そう言い飾りを受け取ると丸めて洗濯機に投げ入れた。
どうしたら良いのか?
少しずつ何かおかしくなって来ている。
祖母の部屋の前に少女がいる。どこの子だ?
『お兄ちゃん、そこから出ておいでよー』
どうやら、あの子の兄が勝手に祖母の部屋に入ったようだ。
仕方ない連れ出すかと思い部屋に入ると押入れから足が出ている。
ぐぃっと引っ張るとドタンと畳に落ちた。
あの子の兄は死んでいた。
もう本当に訳がわからない。自分の部屋に戻りベッドに横になるとLINE通知が来た。
職場の同僚からだった。
ご飯を横に4センチ縦に3センチの高さで1日に3回間を5時間は開けて食べる事で、この世界から抜けられるという事だった。
すごい簡単なことだ。もう少し早く教えて欲しかったな。
私の体がベッドから生えてきたたくさんの白い腕に押さえつけられる前に・・・