梅の香 | 羽生結弦選手が素敵すぎて困っている人のブログ。はいぱぁ

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羽生結弦選手が素敵すぎて
こんなブログを書いています。

前ブログでオイタしてもーて
お引っ越し♡

よろしくお願いいたします。




















若旦那

おかみさんが
酷く心配されていましたよ

けして悪い縁談ではないのに






私は

小さな店の跡取りだった

幼い頃より

読み書きそろばん

親に言われたことは

絶対だと

失望させぬよう

懸命に取り組んだ



今回持ち上がった縁談も

素直に受けられるはずであった




………



ひとつきも前のことだろうか

私は

夕方

小川とでも言っていい

川にかかる橋に差し掛かった





ぴいっ

という鋭い口笛が

にやついた人足たちから

発せられると



うつむいて

駆け出した娘が

不意によろけた






危ない!




咄嗟に手を出して

娘の転ぶところを

受け止めた








「あっ…

すみません」





一瞬目が会う

はっとした



黒く濡れたような瞳
桃のように染まった頬
熟れた李のような唇



下を向き

私の胸を

両の手で押し返す




深く一礼して

踵を返す娘



あっ…


またもよろける





「鼻緒が切れている

そこに座っていてください」





…。



話す言葉もなく

私は手拭いを裂き

下駄の鼻緒をすげ替えた




ほの酸い香り

梅の

香りがしていた







「これでいいでしょう

どうぞ」


かすかに触れた
しろい
細い足の指

ぴくりと
親指が震えた



顔は二度と見られなかったが

胸に判を押すように

刻み付けた





「あ
ありがとうございました」


礼をするかしないか

娘は足早に去って行った








ぼうっと
後を見ていると


「よ!
こんなところで
会うなんざ
きっとご先祖様のお導きにちげぇねぇ
ん?
そこの角からいい酒の匂いがするな?
まぁ
付き合え!」


お調子者だが
憎めない知り合いが
否が応でも
腕を引く



「かーーーっ!

五臓六腑に染み渡るねぇ?

まぁ呑め」


私が口下手で
酒もそんなに呑めないのを
承知で
こうして息抜きさせてくれる
数少ない友人だ


「何で

あんなとこに突っ立ってたんだ?」


「別に…」


切干し大根をつつき

聞くとでもなく

酔客の声が入ってくる



「さっきの娘
別嬪だったなぁ?」

「口笛ひとつで真っ赤になるたぁ
生娘だな」

「ありゃ貧乏長屋の
お結って娘さね」

「あぁ病気のてて親と
二人で暮らしてんだとな」

「夜這いに行ってもいいが
隣に臥せった親父がいるんじゃな」

「イヤ臥せってるんだろ?
かまわねぇよ俺ぁ今から行ったって」

「おめぇいつも口だけじゃねぇか
まずその不味い顔手拭いでまるって行けって」



馬鹿笑いが
不快で


黙って

銭を飯台に置き

席を立った




「残りは呑んでいってくれ」


知り合いが
何か言っていたが
耳に入らなかった







…。







朝からまた

母親が

縁談の話をする


「お父さんもこのごろは
めっきり体が弱くなって

お願いだから
早く身を固めて
安心させてちょうだい

それとも

心に決めたひとでもいるのかい?」



「えっ…」



「いるのかい?

まぁ、まぁ!

いつも帳簿とそろばんしか

こころにないと思ってたよ」


「どんな娘さんなんだい?

どこの店の?

私だって鬼じゃないよ

それなりの娘さんならね

連れておいで」




連れて…











私は


貧乏長屋というところの入り口に来ていた

昼間だというのに
薄暗いそこは

ヒッソリとしていた

ちょうど出てきた女人に聞いた



「ここに

結さんという人がいると聞いたのですが」


「あれ
立派な旦那さん

こんな長屋に…

お結ちゃんかい?

せんだって

金貸しに連れて行かれたよ」



「えっ」



「借金が払えなくてねぇ

とうとう身を売られたって話さ」




「父親がいたはずでは」


「さぁ
どうなったかね

養生所にも行ける金もなし」






…。






もう

梅は散り











寂しげな枝

















梅の

香りが匂うたび





胸が


締め付けられる








青い春の

思いであった

















だーーーーー!

あーるたん!
ぶっこみすぎです

これで
堪忍して