こんにちはニコニコ
本の森は五月晴れです。


せっかくのいい気候ですが、あいにく世間は緊急事態宣言中。本を読んでゆっくり過ごすのが一番いい、ということで、インドア派はいつも通りの週末となる予定です。




先日読み終えたのはこちら、
村田沙耶香さんの『コンビニ人間』(文藝春秋)です。




村田さんが芥川賞を受賞された映像も記憶に新しく、といってももう5年ほど前ですが、何だか独特の雰囲気が印象に残っています。



読んでみて納得。


村田さんも実際長くコンビニでアルバイトをされているとのことでしたが、そこで人間観察して得られたであろう感覚が生々しく、フィクションのようで真実を突いているかのような錯覚に陥る一冊でした。




以下ネタバレ含みます。




主人公古倉恵子は、自分は幼少期から変わった子だった、という回想が序盤で描かれます。



例えば、公園で死んでいた小鳥に対して、周囲が可哀想、お墓を作ってあげようと言うのに対し、焼いて食べればお父さんが喜ぶ、と考えてしまうような子であったと。



成長するにつれて、自分と世間一般との感覚のズレに気づき、コンビニでのアルバイトを境に、機械的に自分を周囲と馴染ませる術を覚えます。



同僚の口ぶりを真似ること。
人の愚痴に調子を合わせること。
センスのいい人が身につけている品物を売っている店で買い物をすること。。。



そうすることで周囲が勝手に、
「私たち、気が合うよね!」と思ってくれるようになっていったのでした。



ところが「いわゆる適齢期」を超えたあたりから、その手法がうまくいかなくなり。。。そんなお話です。




小説だし、主人公も「普通じゃない」と前置きされているのですが、実はこれは現代人の多くが当てはまる普遍的な事実である、というところに、私は衝撃を覚えました。



センスがいい人が買っているものをSNSで調べて買うとか、職場や学校で親しい人の口調がうつるとか、それがまた心地よくて仲間意識が芽生えるとか、共通の敵の愚痴でストレス発散するとか、共感でしかないですよね。



それをあえて半歩ズレた人間に客観的に語らせることで、違和感を生み、現代社会への疑問を投げかける一冊です。



最後に、この本を象徴する一文を引用したいと思います。


    

「つまり、皆の中にある『普通の人間』という架空の生き物を演じるんです。あのコンビニエンスストアで、全員が『店員』という架空の生き物を演じているのと同じですよ」




人は無意識のうちに、何かの役割を演じて、時々うまく演じ続けられないことに苦悩し、生きているのかもしれませんね。そんなことを考えさせてくれる読書の時間でしたニヤリ