見事な傑作であった。


DVDで観て、良かったかもしれない。・・・というのも余りに邪悪の造型が見事で、劇場でこの作品に飲み込まれるには少々覚悟がいると思ったからだ。


バットマンの孤独は深い。


演じたクリスチャン・ベールChristian Baleは、映画「アメリカン・サイコAmerican Psycho」(2000)でマンハッタンに住む金融エリートのシリアル・キラーを演じていてそのイメージが強烈にあり、この映画で善玉なのに悪のイメージを漂わせてる。その配役の妙。


相対するジョーカー役のヒース・レジャーHeath Ledgerは、この映画の撮影中に既に不眠症にかかっていたとされ、この映画が遺作となってしまった。鬼気迫るそのジョーカー役は演技を超えヒース・レジャーの実人生をダブらせ虚実皮膜の綱渡りのようだ。悪玉であるのに影の主役でありえたのは、この世界の悪の権化を見事に体現したからであろう。


善玉であるバットマンと悪玉であるジョーカーが、光と影ならぬ陰と影の合わせ鏡となっており、この映画を奥行きの深い、絶望的な、ダークサイドの、しかし現代的な、極めて寓意的な作品にしている。


見事なプロダクトである。


The Dark Knight.


闇の騎士とはバットマンのこと。

このゴッサム・シティに「白い騎士」(ホワイト・ナイト)はいないーそんな世界観で造型されている。


ゴッサム・シティが海の向こうのアメリカばかりではないことを、我々は知っている。


ホワイト・ナイトを探すことがこんなに難しい時代になっていると、今の日本人もまた感じている。


しかし希望を捨てていないからこそ、この映画は合わせ鏡のように重く陰鬱でありながら魅力的だ。