(384) 「古書の来歴」を読んで | momodaihumiakiのブログ

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2022年12月18日再スタート

 

 

 

 

古書にまつわる歴史ミステリ。
面白かった。
古書は、「サラエボ・ハガター」。実在の書物。
「サラエボ・ハガター」はサラエボの国立博物館に所蔵されている。
ハガターとはユダヤ教の三大祭りの一つで春に行われる「過越の祭(すぎこしのまつり)」の際に読まれる祈りや詩などで編纂された冊子。出エジプト記を伝えるユダヤ教の聖典という。

ユダヤ教、イスラム教、キリスト教、異端裁判、パルチザン、…… 知らないことばかり。ヨーロッパ、中東の歴史を知るきかっけにもなった。
知的好奇心をかきたてる。

 

 

古書の来歴 (創元推理文庫)

古書の来歴 (創元推理文庫)

 

 

主人公は、ハンナ・ヒース。シドニー在住の古書鑑定家。
古書に挟まった蝶の羽、羊皮紙に染み込んだワインの滴、塩、白い毛。
鑑定・謎解きを通じて、古書にまつわる500年余にわたる過酷な現実が描かれる。
 

古書がたどった道筋。

セビリア (スペイン) ⇒ タラゴナ (スペイン) ⇒ 
ヴェネチア(イタリア) ⇒ ウィーン (オーストリア) ⇒
サラエボ (ボスニア)

 

 

目次

ハンナ 1996年春 サラエボ
蝶の羽 1940年 サラエボ
ハンナ 1996年春 ウィーン
翼と薔薇 1894年 ウィーン
ハンナ 1996年春 ウィーン
ワインの染み 1609年 ヴェネチア
ハンナ 1996年春 ボストン
海水 1492年 スペイン、タラゴナ
ハンナ 1996年春 ロンドン 
白い毛 1480年 セビリア
ハンナ 1996年春 サラエボ  
ローラ 2002年 エルサレム 
ハンナ 2002年 グヌメレン オーストラリア、 アーネムランド

 

どんな時代状況だったのか 目次にそって
 

 

 

 

 

 

 


歴史の勉強になった。
15世紀末のスペインでの異端審問所、レコンキスタ。第2次世界大戦でのサラエボでのナチズム、パルチザン。そして、冷戦終結後のサラエボ包囲戦の現実。

「蝶の羽 1940年  サラエボ」に登場するユダヤ人の少女ローラの生きざまに共感した。彼女は半世紀余を経て、「ローラ 2002年 エルサレム 」に再登場する。奇跡の再会を果たす。古書の力なのであろうか。作者のミステリーの凄さだ。
 

そして、ハンナ・ヒースの友人の言葉が「古書の来歴」の要約だと思う。

P308 
(ハンナ・ヒースとの会話で、マサチューセッツ州ハーバード大学フォッグ美術館主任学芸員 ラズマス・カナハの言葉)
「きみの話によれば、その本は人類の苦難を幾度となく乗り越えてきた。考えてもみろよ。 たとえば、コンビベンシア (711年~1492年のスペインでユダヤ教徒、イス ラム教徒、キリスト教徒が比較的平穏に暮らした時代 ) のスペインのように、 人が互いのちがいを認めあって、うまく生きていた時代もあった。建設的で、豊かな社会を 築いていた。その後、恐怖や憎悪、他者を悪にしたてあげたいという欲望が――そう、どう いうわけかそういったものが湧いてきて、社会全体が崩壊することになる。異端審問、ナチ、 過激なセルビアの民族主義・・・・・・・歴史はつねに繰り返される。それを考えれば、問題のハガダーはいまも、そういった歴史すべてを如実に物語ってるんじゃないかな」

 

 

「サラエボ・ハガター」、宗派の違いを超えて多くの人たちが守り、容赦のない焚書と戦火の時代をくぐりぬけた。私は希望だと思う。
主義や信条、宗教などの違いがあってもスペインのコンビベンシアのような社会は持続可能だと信じる。目前でロシアによるウクライナ侵略が続き、イスラエルによるジェノサイド攻撃が毎日のように繰り広げられていても、

 

最後の最後、スリルとサスペンス。読むものを引き付けて離さない。

ハンナ・ヒースの母親との確執や恋愛事情も盛り込まれていて、それはそれで楽しい。

 

 

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