★★★


『そういえば、***サンって、何してる人?』


ちょうどアタシがお弁当を食べ終わったのを見計らったように、向かいの席から声がした。


顔を上げるとかずさんは、視線をテレビに向けたままで、手に顎を乗っけてボーっとしてた。


「あ・・・・、IT関係の仕事で・・・ ゲームとかソフト、作ってます。」


『ふぅ~ん、いまどきだねぇ?』


かずさんは興味なさそうに答えて、また黙ってテレビを見てた。


アタシはテーブルの上のお弁当を片付けて、ビールを片手にソファーへ移動すると、みかんの側に座って、その背中を撫でた。

仕事が終わって家に帰って、こうしてみかんの背中を撫でていると 心がスーッとあらわれて穏やかになっていく。


プシュッ・・・っとプルタブを引き上げて、ビールをグビッと喉に流し込む。

やっぱり仕事のあとのビールは美味しい。


・・・と言っても、そんなに強い方じゃないから、缶ビール1本で十分酔えるんだけど。


『ゲーム作るって、たとえばどんなの?』


あ・・・、やっぱりそこ・・・喰いつくよね?

これだけゲーム機と、ゲーム関連の雑誌があれば、かなりのゲーマーに間違いない。


「う~ん・・・とね・・・


あ、ちょっと見ていい?」


アタシは立ち上がると、ゲームが並ぶ棚の前に立って、膨大な数の中から いくつかチョイスする。


「これと・・・・これ、 それから これも。


あっ、これもそう! こっちはアタシが一年目の時に初めて手掛けたヤツだーー!なつかしいなぁ~」


『へぇ~っ!すっげぇな、マジで?!


俺、このゲーム、すっげぇ好きなの。何かカンドーだな~』


「それはそれは、ありがとうございます。


まぁ、作ってる・・・って言っても、私が関わってるのはソフトの方で、ハードはまた別の会社に委託してるんです。」


アタシは思わず饒舌に、ベラベラと聞かれても無い事を喋った。


『ふふっ・・・』


そんなアタシを見て、かずさんは可笑しそうにクスクス笑ってる。


「なっ・・・ なによ??」


『いや、別に・・・?


なぁんだ、ボーッとしてんのかと思ったら、結構ちゃんとやってんじゃん?』


かずさんは、アタシが携わったゲームを眺めながら楽しそう。


「当たり前でしょ? これでも一応、チーフ任されてるんですから。」


かずさんとのやり取りは、何だか自然で、心地良くて、スーッとアタシの心の中へと入って来た。






なんだろう・・・・ この感じ。


こうやって自分の事を素直に話せるのって、久しぶりかも。

いつもなら、あんまり自分の事なんて話さないのに・・・・



そんな中でも、みかんは、気持ち良さそうにス―ス―と寝息を立てて眠ってる。


アタシとかずさんは、みかんを挟んでソファーの右と左に座って、アタシが作ったゲームを一緒にやったり、そのゲームについての話を熱く語り合ったりした。



時々、寝がえりを打つみかんを、かずさんはヨシヨシって撫でたりして、

アタシたちは夜遅くまで、一つのソファーに座って盛り上がった。



★★★


んふふ♪


なんだかイイ感じの二人☆