★★★
『この猫、あなたの??』
ガチャッ・・・と開いたドアから出てきた一人の男性。
その腕の中で、ミャーッって泣いてるアタシの猫・・・
「あっ!そ、そうですっ! すみませんっ!ご迷惑おかけしちゃって。
あのっ、アタシ・・・今日こちらに引っ越してきました。
あとでご挨拶に伺う予定だったんですけど・・・ あのっ、よろしくお願いします!」
必死で髪を掌で押さえて、Tシャツの裾を引っ張ったり、ギョサンを隠すために足をモゾモゾしたりしながら、
アタシはその男性に深々と頭を下げた。
クククッ・・・
なのに彼は、掌で口元を隠すようにして笑いをこらえて肩を震わせている。
よーく見たら猫背で、髪はボサボサだし、自分だってスウェットの上下だし、
人の事、笑える?!
それは、さっきベランダから聞こえてきた歌声の主とは程遠いような雰囲気で・・・・
おたくっぽい感じの黒ぶちの眼鏡なんて、見た目は超ダサい。
『とりあえず、入れば??』
そういって彼は、アタシの猫を抱いたまま、また部屋の中へと入っていった。
「えっ?ちょっ!!待って?あがるって・・・・!」
『なんなの? やっちゃったんでしょ?? インロック。 ぷ・・・ww あほですね・・・w
ずっと、そんな格好でそこに居るつもりですか? 格好悪ぃっすよ??』
そういってケラケラと笑いながら部屋の奥へ消えていく。
ちょっ!! あほ・・・ って!!
初対面の人に言われたくないって!!
まぁ、言い返す言葉もないけど・・・
だけど、確かにこんな格好でここに居る訳にも行かず・・・
よりによって、今日は日曜で管理人さん休みだし。
ことごとく、ついてないアタシ。
「おじゃまします・・・」
アタシは諦めて、彼の部屋に上がる事にした。
『あ、そだ・・・。 なんてーの? 名前。』
「えっ? あ・・・ アタシは***。 で、その子は“みかん”です。」
『みかん???ふふっ・・・そっか~、お前、みかんって~の?可愛いじゃん。
あ、オレは・・・・
えっと・・・・・松本。 よろしくね? お隣さん。』
そういって彼がかけていた眼鏡を外してアタシに向けた笑顔は、すっごくキラキラしてて、思わずドキッとした。
松本さん・・・・
でも、どっかで見た事あるような・・・
アタシは子猫のみかんと戯れている彼を眺めながら、ふと そんな事を考えた。
★★★
さて、えっと・・・・
お隣の・・・・松本さん?????
なんでっ?!!!
謎解きよろしく〜