★★★


いつもの丘をめざして、自転車のペダルをいっぱいに漕ぐ。

雨上がりの坂道は、むせかえりそうなほどのアスファルトの匂い。

もう夏が近づいている事を感じるような心地良い暑さに、Tシャツにジワッと汗がにじんでくる。



今日は丘のふもとの広場が、なんか騒がしい。

どっかのテレビ局がロケやってるのか、数台のカメラと大勢のスタッフ。

こんな田舎の街にテレビが来るなんて珍しいことで、ちょっと気になったけど

休憩中なのか、なんなのか芸能人っぽい人は居なくて、ちょっぴり残念。



友達に自慢できると思ったんだけどなー?

アタシはその横を自転車で擦り抜けて、ぐんぐんペダルを漕ぎ続ける。



今日はいつもより気分がいい。

最近、気分が滅入ることが多くて、薬が手放せなかったけれど

朝から薬は飲んでいない。



とりあえず、元気になったら一番にあの丘に行きたかった。



アタシは丘の上をめざして自転車を漕いだ。




途中、丘の中腹辺りで、ひと際 目を引く後姿が見えた。

こんなところで誰かに逢うことなんて、絶対ないのに

よりによって・・・・外人さん・・・??


ちょっと猫背で、腰が悪いのか・・・・ 癖のある歩き方。

つらそうに脇腹を手で押さえている。



こんな場所で何してるんだろ・・・・?


アタシは気になって すれ違いざまにチラッと彼を見た。

一瞬、バチッ・・・と目が合って焦った。


なんとなく通り過ぎて・・・・


・・・・・・えっ?!!!!


アタシは思わず もう一回 振り向いて二度見・・・しちゃった。



えーーーーっ!!!!

えーーーーーーっ?!!!!


ちょっ!!!



嘘でしょう??!!



ドクンッ・・・ ドクンッ・・・



一気に心臓が激しく動き出す。




アタシは勢いに任せてペダルを漕いで、逃げるように坂道を一気に駆け上がった。



丘の上へ続く階段の手前に自転車を無造作に投げ捨てて、



15段の階段を一気に駆け上がった。




ハァ・・・ ハァ・・・ ハァ・・・・・




まだドキドキがおさまらない。






どうして?!

なんで??!

なぜ彼がここに居るの??





アタシはいつもの定位置に向かって歩きながら、速まる鼓動を必死で抑えていた。






ここから見る景色が好きだった。

ここは、アタシだけの楽園。




今まで見た どんな景色より、ここから見る景色に惚れ込んで

ここに移り住んで来たほどに・・・・





タッ・・・ タッ・・・ タッ・・ タッ・・・・



ゆっくりと足音が聞こえて、彼が階段を昇って来た。





風に揺れる金色の髪が、まるでジャングルを歩くライオンのたてがみみたいに


カッコ良くユラユラとなびいていた。





丘の上まで上がって来た彼は、その場所で足を止めると そのまま その場に立ち尽くして動かなくなった。



ツ・・・・・と彼の頬を一筋の涙が流れて、次々と溢れては零れ落ちた。



その涙はキラキラと輝いて、地面に落ちる前に消えた。





綺麗なその横顔は、まるで映画のワンシーンでも見ているみたいで・・・・




アタシはそれを不思議な気持ちで見つめていた。





★★★



カノジョsideのお話でした〜🎶



綺麗なその横顔を・・・ 見つめてみたいな。




まだまだ謎だらけ。




猫背、金髪と言えば…



もうおわかりですね??
(*ˊ艸ˋ)ふふふ…



ちょうど今も金髪?銀髪?っぽいので妄想しやすいかな〜💛と思って引っ張り出して来ました!


書いてた当時、金髪だったんですよ〜✨