★★★


「ねぇ、翔さん、時計・・・どうしたんスか??」


帰り仕度をしていると、マツジュンが声を掛けてきた。


『え・・・・?あぁ・・・うん、まぁ・・ね、いろいろ。』


「いっつもしてんのに珍しいよね?修理にでも出してんの??」


『ふふふ・・・・修理・・・まぁ、修理・・・みたいなもんかな? オレの心のね。』


「ふぅーん・・・・」って、マツジュンはちょっと不思議そうな顔をして、また戻っていった。



そう・・・・オレは彼女に一枚のメモと一緒に、大切にしている腕時計を置いて来た。


きっと、彼女ならこの時計の意味を・・・ちゃんと解ってくれるって、そう思ったから。


オレが大事にしてきたあの腕時計を・・・



< ねぇねぇ、翔くん!このあとみんなでご飯行こうって言ってんだけどさぁ?行くでしょ?! 


どっかいい店知らない??うまいもん喰いたいな~って話してんだけど!翔くんなら、良い店知ってんじゃねぇかって、みんなが言うからさ??>


相葉くんが、そういってまたテンション高めにやってきた。


『ん・・・・あぁ、オレ、今日はパス!! ちょっと行くとこがあんだよね?』


< えーーーっ?!なになに?ねね、あっ!!もしかして・・おデート?!ちょっとちょっとーー!!何だよ~!〉


『バカ、そんなんじゃねぇよ!』


オレに絡みついて、ヒューヒューひやかしてくる相葉くんを振り切ってオレは楽屋を後にした。





さいたまを後にするとき、オレは一つの賭けに出た。


もう一度、彼女と向き合うために・・・・・


この想いが彼女にどうか届いて欲しいって一心で。




メモには、オレのありったけの想いを綴った。


腕時計はその気持ちを表すもの。



オレは車に乗り込むと、そっとポケットの中に手を突っ込んだ。


冷たい感触が手にあたって、その瞬間なんとも言えないあったかい気持ちになる。


それをポケットから取り出して、明るい方へかざしてみる。


それは、彼女がいつも腕に嵌めていたシルバーの時計。



彼女は収録が始まる前に、邪魔になるから・・・と腕から外して机の上に置いた。


オレは自分の時計と引き換えに、彼女が就職する時にお母さんから譲り受けたという大切にしていた時計をこっそり持ち出していた。


ライトに照らされて、キラリと輝くシルバーの時計のベルトを、オレはそっと指でなぞった。

文字盤にはダイヤらしき石が埋め込まれているその時計は、アンティークっぽくてかなり高価なものに違いなかった。



初めて出逢ったあの時から、彼女の腕にはこの時計が光っていた。

最後に逢ったあの日も・・・・・・



オレはその “人質” をギュッと握りしめて胸に当てた。



彼女はこれを必ず取りに来る・・・・きっと来る。

そっと大切にポケットに仕舞いこんで、車のエンジンをかけるとゆっくり夜の街を走らせた。




★★★


翔くん、持ち出しちゃってますけど(笑)


さぁ、二人は逢えるかな??


今度こそ逢わないと怒られますねww


どうしよっかなぁーーw