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しばらく仕事が忙しくて、早朝から深夜にかけて家にも帰れない日々が続いていた。

相変わらず何度かけても繋がる事のない電話に、少しイライラしながらも、ただ時間だけが悪戯に過ぎてゆく。

ようやく取れた…いや無理矢理に取った休日。
…といっても、夜からは仕事だったから正確には休みじゃないけど。

もうあれから2週間も過ぎていた。

オレは朝、開館と同時に図書館へと急いだ。

まだ人通りも少ない朝の図書館。
この空気が好きだ。

まだ少し開館時間には早かったけど、もう図書館には明かりもついて、中には人も居るようだった。

頼むから、そこに居てくれ…と祈るような気持ちで、オレはそのドアに向かって走り出していた。

スーッと静かに自動ドアが開き、館内の静けさに包まれる。

カチャカチャと受付でキーボードを叩く音だけが響く。

「おはようございます。…あっ!櫻井さん!?
お久しぶりですね。
まだ開館時間じゃないですけど…
櫻井さんならいいですよ?」

受付に居たのは彼女じゃなくて、もう一人の方。

『あっ、おはようございます。
すいません、こんな朝早くに。』

オレは館内をキョロキョロと見回した。

「あの~……もしかして、***さん…?ですか?」

そんなオレに気づいた彼女が、話し掛けてきた。

『あっ、あぁ、うん。来てますか?』

「えぇ…あの…それが……」

オレをちょっと上目遣いで見ながら、彼女がどこか言いにくそうに告げる。

「来てないんですよ…ずっと。
その…連絡もなくて。携帯も繋がらないし、困ってるんですよね?私たちも。」

『来てない??ずっと?』

「えぇ…たぶん、このままじゃ解雇になると思います。
館長もかなりご立腹ですしね。」

彼女が来てないって事実に、オレは愕然として動揺が隠しきれなかった。

『そっ…そっか…。

あのっ、じゃあ、もし何か彼女から連絡あったら、オレに連絡もらえますか?』

そういって彼女に連絡先を教えて、オレは図書館を後にした。


★★★

あらら…

彼女、無断欠勤中ですって…あせるあせる

大丈夫かしら?