★★★
―――20時 渋谷


「もぉ~!なんでオレが行かなきゃなんない訳~?
今日はガッツリ、奢ってもらうからね?」

オレの隣でブー垂れながらも、しっかりついて来てくれるマツジュン。

こういうトコ、好きなんだよねぇ?

…ってか、それ解っててお願いしてるオレって、相当な悪人か??

『わかった、わかった!今日は特別!もう何でも頼んでヨシ!!』

「おぉ!さすが翔くん♪話しが解るねぇ~」

そんなオレの一言で、ご機嫌になっちゃうから、この人って扱いやすいんだよねw

『…えっと…あぁ!ここだ、ここだ。何かね、彼女の知り合いがやってる店らしいんだわ。あ、例の連れてきてくれる方の。』

「ふぅ~…ん。」


細い階段を昇った、2階、
そこはこじんまりした小さなレストラン。

こんな所に、こんな店が存在してたのか…っつうぐらいの。

「まだ新しそうだね?何食べさしてくれんだろ?」

もう奢られる気満々のマツジュンとは逆に、こんな場所で彼女に逢える…って事が、オレの心臓を加速させていた。

カラン…と、まるで安っぽい喫茶店みたいなベルが鳴って、

《…いらっしゃいませ~♪…あっ!》

自分の母親と同じぐらいの歳の女が、明らかに顔を変えたのを感じた。

後ろでマツジュンは、帽子を目深に被り直し、サングラスをかけたのが解った。

芸能人の習性…ってやつ?

《あ、えっと…どうぞ、奥です。もうお見えですよ?お二人。》


そういって丁寧に奥の部屋へと案内された。

《今日は休みだったんですけど、貸し切りにしてあるんですよ。
誰も来ませんから、安心してくつろいで下さいね。》

そういわれたのが、さらに特別扱いされた気がして、

まぁ、いつもの事だけど。

こんな小さな店じゃ、貸し切りにしなきゃいけないほどなのか…って、少しだけ溜息が漏れた。


《さぁ、どうぞ。こちらです。
…今日は…ダブルデートかしら?…ふふふ…。
ごゆっくりね?》

丁寧な割には、ちょっと馴れ馴れしい感じがカンに障った。

『あぁ、どうも。』

それでも、いつもの営業スマイルは忘れない。

オレたちアイドルは、イメージが大事だからね?

少し離れた奥にある個室に案内されて、仕切りの向こうに二つの影が見えた。

ふぅ~…っと一つ深呼吸をして、オレたちはその部屋へと踏み入れた。



★★★
いよいよ…入りますww
さて、どうなりますやら…?