★★★
図書館での出来事なんて、とっくに忘れ去って、オレはまた慌ただしい日常に戻っていた…


「翔さん、携帯…何度も鳴ってましたよ?」


楽屋に戻るとニノがゲームしながら、顎で携帯を指した。

『おぅ、サンキュ。』


見ると携帯に見た事のない番号からの着信が、何度も入っていた。

『誰だろ……?』

その中にひとつだけ留守電が入っていて、再生してみる。



--ピーッ…
○○図書館です。先日、ご予約いただいた本がご用意出来ました。
それから…貸出中の本の返却日が過ぎておりますので、至急ご返却下さいますようお願いします。--


まったく愛想のない、例の司書さんからの電話だった。


『もうちょっと可愛く出来ねぇかな…』


思わず言葉にしていたらしい。

「何がです?」


『えっ?…あぁ、何でもねぇ。
あ、オレ、ちょっと出てくるわ。すぐ戻るって言っといて?』


オレは本が入った鞄を掴むと、ジャケットを羽織って駆け出していた。


あの図書館へと………。







時計を見たら、もう閉館時間ギリギリで、ちょうど自動ドアのところに彼女が居た。


重そうな看板を引きずるようにして中へと運んでいる。


『ちょっとコレ持って?』

「えっ?!」

オレは彼女に鞄を押し付けると、その看板を軽々と持ち上げた。


「あっ、ちょっと…そんな困ります…それ、私の仕事ですから…」


『いいって!それよりどこ置くの?』


オレは言われるままに、看板を中にしまった。


『こんな重いの、毎日運んでんの?』


「えぇ、まぁ…もう毎日の事ですから…。慣れましたけど」



そういって少しだけ笑った。



『あっ、それより、もう終わり?…だよね?
ダメかな?持ってきたんだけど…本。』


「あ…はい、もう閉館しました。
…でも、構いませんよ。どうぞ」


そういうと、中へと入れてくれた。



★★★
またまた再会しちゃいました。

相変わらず愛想のない彼女ですが……?