[写真]「三代目林家菊丸」を襲名する林家染弥(左)と師匠の林家染丸




 


四代目林家染丸の六番目の弟子にあたる林家染弥が約2カ月後の9月27日、なんばグランド花月で「染弥改メ三代目林家菊丸襲名披露公演」を行う。それをもって上方林家の由緒ある名跡「林家菊丸」を襲名する運びとなる。


 師匠である染丸をはじめ、一門の総意によって「三代目林家菊丸」が約115年ぶりに復活することになるが、昨年9月に襲名発表を行ってから約1年が経つ。いよいよ「三代目林家菊丸」がお客さまにお目見えするわけで、それに先立ち、7月8日、吉本興業本館(大阪市中央区難波)で襲名披露公演開催発表会見が行われた。染丸師匠同席のもと、落語家染弥がその意気込みなど本音を語った。


 染弥は、落語家になる夢を捨てきれず、大学を中退して、憧れの四代目林家染丸の門を叩いた。年に一度の独演会では大ネタを披露し、師匠ゆずりの女性の演じ方には定評がある。近年は桂文枝に手ほどきを受け、それをきっかけに創作落語にも意欲を燃やしている。古典から創作まで、持ちネタは実に多彩で、幅広い世代に受ける話芸を身に着けた人気の落語家だ。


 会見では最初こそ緊張した面持ちだったが、次第に和んできた印象で、師匠とのやりとりは、息の合った漫才のようで笑いも絶えなかった。それでいて強い意気込みが感じられた。

会見の要旨は以下。


染弥「全国各地で約1年かけ襲名公演」




[写真]染弥(左)と染丸師匠。途中からは笑いの絶えない会見となった=大阪市中央区で




 


「昨年9月27日に三代目林家菊丸を襲名させて頂きますという記者発表をさせて頂きまして、約10カ月経とうとするこの時期に、いよいよ正式に襲名披露公演の発表を本日させて頂くことになりました。9月27日、なんばグランド花月の公演を皮切りといたしまして、東京、名古屋、また私の出身地の三重県、全国各地に約1年かけて襲名公演をさせて頂きたいというふうに考えています。


 今まで以上に気持ちを引き締め直しまして、今年は私にとりましても、落語家として丸20年の節目の年であります。その節目の年に襲名をさせて頂けるということで、何か自分の中で実績を残し、そして賛同して下さった一門の皆さん、噺家全体の師匠方、先輩方、後輩の人たちにも、この染弥が襲名をしてやはり間違いなかったなという運びになって、よかったなと思って頂けるように、実績と周囲の納得、この二つを得られるように一年間精進して参ります。


 襲名の公演が約2カ月後に迫って参りまして、それまではまだ自分のことではないような、ふわふわした状態があったのでございますけれども、やはり印刷物が出来上がって参りますと、いよいよ自分が菊丸になるんだなという、意識が高まってきております。周りの皆様への感謝という気持ちをつくづく感じております。襲名披露公演は決してゴールではなく、ここからがスタートだと思っております」





染丸「挨拶回りでだんだん実感」




[写真]菊丸系図(吉本興業提供)





林家染丸「本人の気持ちがいちばん大事。襲名の気持ちは、自分の決意、自信、運―。この3つ。運もある。この3つを受け止めてしっかりやって下さい。本人がその気になったら、ええもんができると思います。大丈夫や。これからずっと挨拶回りや。暑いなあ(笑い)。頑張りや。度胸を決める。腹を決める。挨拶回りしている間に、だんだん実感してくる」


 「一大プロジェクトを成功させるんだっていう、いろんな方々の支えを頂いて、この襲名という神輿に乗せて頂いた以上は、襲名披露が活気づくように恩返ししたいというのがありますので、腹は決まっております」。慎重な面持ちで、会見の最後にそう締めくくった。




「染弥改メ 三代目林家菊丸襲名披露公演」の日程は、


2014年9月27日、なんばグランド花月(午後7時15分開演)、


2015年1月21日、国立劇場小劇場(午後6時30分開演)。


(文責・フリーライター 北代靖典)




■林家染弥(はやしや・そめや)


1974年(昭和49)、三重県に生まれる。93年、大阪産業大学経済学部入学。落語研究会入部。同年9月、染丸一門会に弟子入り志願。94年、六番目の弟子となり、師匠から「染弥」と命名される。2004年、第41回なにわ芸術祭「新人奨励賞」受賞。13年7月、平成25年度「大阪文化祭賞奨励賞」受賞。落語公演、テレビ出演多数。




(THE PEGE)