聖域だという、地元の人が大事にしている、神聖な祈りの場所にお邪魔させてもらった
人々が太古の昔から素朴な祈りを捧げる、とても神聖な場所。
騒がずに、何にも触れずに心静かに歩いてほしいと事前に注意を受ける。
ところが。
自然に囲まれた荘厳な祈りの場所であるはずのそこにいたのは、ピースしながら大はしゃぎで何枚も写真を撮る若者たち。
ポーズをかえ、飛びはねながら何枚もスマホに交代で写真をおさめていた。
あまりに場違いな彼らに、余計なお世話かとおもったけど、声をかけようと思った。
「あの」
静かにしたほうがいいですよ。
そう言いかけると、写真を撮りたいと思われたのか
「あっすいませーん、すぐどきまーす」
「ほらほら、邪魔だからうちら。早く行こ」
なんか幸せな勘違いを大騒ぎでしながら、消えていった。
それ以上なにも言えず、周りにいた何人かもそのまま固まっていた。
まあもういなくなったし…と気を取り直し、森の奥へと歩を進めるとさらに静かな祈りの舞台があった。
遠くに海をのぞむ、小さな場所が開けていた。
たくさんの木々に守られた大きな崖のふもとに小さな石が置かれている。
聖なる石だから、触らないでくれという注意書き。
昔、たくさんの大事な宝物を埋めて、祈りを捧げたらしい。
感慨深く小さな石を眺めていると、アジア系の某国の観光団体がやってくる。
注意書きが日本語なので読めないらしく、石のことをスルーして、景色の写真をたくさん撮り始めた。
ひとり、ガイドさんらしき人がなにやら説明しているが、みんなが写真を撮り始めると、よっこらしょとばかりにその石に座った。
ええええ?!
すいませんそこ触らないでくれと書いてあるんですけど。
ここ来る前に、入口で二か国語で説明するビデオを観てるはずなんですけど。
わたしでもわかる簡単な英語で、さわるなと説明してましたけど…
あれ、もしかしたら私が勘違いしてるのか?
いや、でも看板に書いてあるし…
頭がぐるぐるしながらぼうぜんとしていると、その一団が去っていくのを追いかけて、おばちゃんガイドも去っていった。
今度こそ、本当にぼうぜんとした。
なに今の?
近くにいたカップルが
「なんか今座ってなかった?」
と会話してたのが聞こえた
座ってたよたしかに…
祈りの森を出ると、さっきのおばちゃんガイドさんが流暢な日本語で電話していた。
名乗った名前で外国のかただと思ったが、日本語は全くもって遜色なかった。
せっかく日本を案内できるほどの言葉も知識もあるのだから、文化もご理解いただけないでしょうか。
苔むした、古びた石かもしれませんが、そこは地元の人が大切にしているもの。
日本語、読めてると思うんです。
帰りに、別の場所でお見かけしたおばちゃんガイドさんは、縁石に座っていた。
どこにでも座る人なんだな…
