ベンゾジアゼピンを減薬していく過程で繊維筋痛症のような症状……全身の痛み、筋硬直、こわばり等々……に見舞われる人がいます。軽い症状まで含めると、かなりの割合の方が経験されているのではないでしょうか。

 ベンゾの離脱症状を知っていれば、慌てずにすむかもしれませんが、薬を減らすと「離脱症状」(とくに筋肉関連の症状が出る)などということは、ベンゾを処方した医師、あるいは薬剤師、誰も「説明」してくれませんから、ベンゾと線維筋痛症を関連付けて考える人はあまりいないのではないかと思います。(とはいえ、現在ではネット情報で「ベンゾ離脱」はかなり知られるようになっていますので、数年前よりはご存知の方、多いと思いますが。)

 

 「線維筋痛症」の説明として、こんな図解があります。

 

             https://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rm120/kouza/senikintsu.html

 

 ややこしいのは、ベンゾの離脱症状もこの赤い部分に痛みを訴える方が多いということです。

 

 そして、当事者としては、原因はともかく、この痛みを何とかしてほしい。

 そこで医療機関を受診することになります。

 しかし、どこを受診しても原因がわからず、ドクターショッピングをする方も多い。内科、整形外科、リウマチ科、あるいは心療内科(しかし、ベンゾを服用(減薬)中としたら、すでに心療内科等へはかかっているはずです)。

 そして、ついに「線維筋痛症」という診断にたどり着くのです。

 

 線維筋痛症という病気は現在のところ、原因が特定できていません。ただ、一説に、痛みを感じる脳が機能障害を起こして、それでわずかの痛みも大きく感じてしまう、ということのようですから、「線維筋痛症」は診断名というより「症状名」のようなものです。ということは、診断の幅が非常に広いことを意味します。

 一応診断基準はあります。アメリカ・リウマチ学会が1990年に定めたものですが、それによると、「全身に原因不明の痛みが3カ月以上続き、全身に18カ所ある圧痛ポイント(上の絵)を指で押し、痛い場所が11カ所以上あると、これを線維筋痛症と診断する」というものです。

 治療としては薬物療法が主流で、抗うつ薬、抗てんかん薬、鎮痛剤等々。痛みをとるために、多剤になりがちな病気でもあるようです。

 例えば、こんな感じ。

 サインバルタ、リボトリール、リリカ、トラムセット、ワントラム(新薬のツートラム)、カロナール、ノイロトロピン、レグナイト、アコニンサン、トラマール。その他諸々。

 抗うつ薬、抗てんかん薬、非オピオイド鎮痛剤あり、レストレスレッグス治療薬あり、利尿剤あり……。

 ともかく、痛みをとるためなら、効果のありそうな薬を多少の副作用は我慢して飲み続けるしかない(と考える医師が多いようです)。

しかし、これだけの薬を飲んでも効果があるわけでない。痛みも取れず、それどころか多くの服用に苦しむようになっただけ……。

 

 ベンゾと関係なく線維筋痛症という確かに病気はあります。

 そして、線維筋痛症に間違われやすい病気として、関節リウマチ、甲状腺機能低下症、脊柱管狭窄症、SAPHO症候群、をあげている医師もいます。https://medicalnote.jp/contents/180307-009-LZ

 しかし、ベンゾジアゼピンに関してはまったく触れられていません。

 (その意味でも、医療において「ベンゾの離脱症状」というのは、ないものとして扱われているようです)。

 

 もし、ベンゾ系薬剤の服用経験があり、減薬をしている最中、あるいは断薬後に、筋肉の痛みの症状が出てきたら、まずはベンゾの離脱症状を疑ってみてください。

 他科を受診し、線維筋痛症と診断されて、これまで以上の薬を服用したり、リボトリールのような、さらに力価の高いベンゾを飲む羽目になったりしませんように。

 医師に「ベンゾの離脱症状」としての視点がなければ、せっかくベンゾから抜け出そうと減薬を始めても、元の木阿弥どころか、さらなる薬漬け医療が待っているかもしれないのです。

 もしベンゾ系薬剤の服薬、減薬、断薬経験があり、線維筋痛症と診断され多剤の薬物治療を受けられているとしたら、現在の治療を少し見直してみてほしいと思います。