今日の東京新聞(こちら特報部)に次のような記事が出ました。

医療保護入院 「まるで誘拐」

精神疾患「移送制度」の実態

 家にいたら知らない人がやってきて、無理やり車に乗せられ病院へ。ドラマや小説ではない。現実に起きたことだ。精神疾患が疑われる人を入院させるため、本人の同意なしに病院へ運ぶことができる精神保健福祉法の「移送制度」が問題視されている。昨年11月には、民間救急の業者に無理やり運ばれた末にけがを負わされたとして、都内の男性が逮捕監禁傷害容疑などで業者らを東京地検に刑事告訴する事態も起きた。法律上、移送は都道府県知事の権限で行うが、形骸化しているのが実態だ。

(以上引用)

 

 突然、業者がやってきて、車に乗せられようとした。当然、抵抗する。抵抗したところ、殴られたり、踏みつけられたり。全治2週間のけがを負ったとのことです(診断書あり)。

 業者は男性の言動を心配した家族から依頼されて、男性をまず受診するよう説得。応じなかったため、やむを得ず移送したと言っています。

この男性の弁護を引き受けた弁護士は、「こういう相談は多いが、業者や依頼者がわからず、客観的な証拠も乏しいため追及が難しい。今回はあまりのケガに驚いた家族が業者をただし、報告書が提出されたので、状況が客観的に把握できた珍しいケースだ」と言っています。続けて「本人が拒んだのに無理やり連れだし、車から降りたいと言っても運んだことは報告書にも書いてある。業者側が認めた範囲でも、逮捕監禁は成立する」。また「家族が依頼しても、本人は同意していない。業者に無理やり運ぶ権限はない」と断言しています。

精神保健福祉法では、精神疾患の疑いのある人について、指定医が入院の必要性を認め、家族等が入院を同意した場合、患者本人の同意がなくても入院させることができます(医療保護入院)、この制度による被害者がどれくらいいることでしょう。医療保護入院の悪用もあとを絶ちません。精神科はそういう事情も十分わかっていて、患者を入院させている場合も多々あります。

この経験は人に大きなダメージを与えます。特に女性の場合、その恐怖は想像を超えたものになります。PTSD、その果ての解離症状。それを乗り越えることはもしかしたら至難の業。生きる屍状態になってしまう人もいます。

以前、自殺未遂(本人はそんなつもりはなかったそうです)とされ、家族によって医療保護入院させられた女性がいました。入院と同時に、拘束、大量の薬物投与。それが何日も続いたそうです。

結果、感情が消えてしまった、喜怒哀楽がわからないと、子どもへの愛も消えた、何もかもゼロ……。そう語っていました。

喫茶店でお会いして、会計を済ませながら、彼女のその立ち姿を遠くから見たときに、強い違和感を覚えたことをいまでも鮮明に覚えています。この経験は彼女自身の「存在」そのものを消してしまった、のではないか……。瞬間、そういうイメージが湧きました。

 

ただ、この制度、行政も使っていますし、紹介もしています。逮捕監禁に行政が加担していることになります。

さらに、医師側の問題も大きいです。

家族の話だけを鵜呑みにして、本人を診察する前にすでに医療保護入院が決まっている場合も多い。本人が否定しても、もうすでに「病人」としてしか見ていない。だから、抵抗する。抵抗すれば、「病気の症状」とされてしまう。何とも本人にとっては、逃げ道のない底なし沼状態となります。

医療保護入院制度、必要でしょうか。